NOVEL

□酒乱人 ラクシャータ
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○ラクシャータが介抱する

「ちょっと、大丈夫?」

胡坐をかくライに対して、ラクシャータは彼の前で屈んで目線を合わせる。ラクシャータの顔を見るとライは大丈夫、と笑顔を作って言った。
「………」
大丈夫と言うライの言葉をラクシャータはそのまま鵜呑みにしなかった。
先程の彼の笑顔には、感情が篭ってない、というよりは相手を心配させない為の作り笑いだとわかったからだ。
「大丈夫だよ……それよりさ、カレンとラクシャータも飲まない?色んなジュースがいっぱいあるんだよ」
ライは辺りを見回すと、目当ての物を発見したのか、まだ未開封の缶を手にとって二人に見せ、二人は心の中で溜息を吐く。
ライが手に取ったその缶には、大きくカクテルという酒の種類がはっきりと表記されていたからだ。
小学生でも読めそうなものをジュースと間違えてしまうのは重度に酔っぱらっている証拠となる。
基本的の酒というものは、適度に飲めばストレスを緩和し、心を楽しませるものだが、飲酒適齢期に達していない者が飲むと話しは変わる。
日本人の半分は、アルコールを摂取すると人体にとってマイナスの症状をもたらしてしまう「酒が飲めない」という属性を持つ人が多い。
顔面の紅潮や頭痛、更には激しい動悸などの人体からの警告が出ているにも関わらず、アルコールを受け入れたフリをする者もいる。
基本的にそのような人間は大抵、いらない気を使っている場合が多いとも聞く。
ライは優しく、しっかりとしているけれど、どこか抜けてて、意外にも天然な部分も持ち合わせる。
それは悪いことではないが、今回ばかりはそれが裏目に出てしまっている。
ラクシャータは昔、中華連邦にいた時期があり、神蘭のことはよく知っている。外見がジュースに見え、その正体が酒だと知るには口に含むしか方法はない。団員の中で酒を数多く飲んだことのある玉城でも看破は難しいであろう。
彼の性格上からすれば、恐らくは口に含んだ時に酒と気付いたがそれを吐き出すわけにも突き返すのも悪いと考え、いらない気を使って飲み干した、といった所だろう。
「………何言ってるんだか」
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