NOVEL

□迷子の迷子の子猫さん
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「本当に大丈夫か、ちゃんと行けるのか?」
とあるマンションの玄関。天使の羽の飾りがついたリュックを背負う子供に対して母親は心配そうな顔でそう言った。
「大丈夫です、お母さん」
母親を心配させまいとしようとしているのか、ビシッと手を上げて、太陽のような笑顔で言うと元気よく、扉を開けて外へ出て行った。
部屋に戻り、ベランダに出て視線を外に向けると機嫌が良さそうな犬のように歩く我が子の姿が見えた。
「……やはり、心配だな」
我が子の姿が自分の視界から見えなくなるほんの少し前に母親は携帯電話を取り出し、番号を打ち始める。

【迷子の迷子の子猫さん】

心配する母に大丈夫だと言い、自宅から出て行って数時間後。
「ここ、どこ……?」
母から渡されたトウキョウ租界の中でひときわ目立つ建物である政庁の地図を広げ、上下逆に見てみる――わからない。
次に、それを左右ひっくり返して見てみる――ますます、わからなくなった。
政庁内の廊下でやはりと言うか幼い子どもは迷っていた。受付で用件を伝えると、母からその事を承っていたらしく、簡単に通してもらった。
しかし、それから数分もしない内にこのようになってしまった。
政庁はとにかく広い。色々な部署が混じっている為に非常に広く、迷いやすい事で有名だ。
何故、此処に来たかというと、ここ政庁に勤めている父親に会いに来たのだ。
前々から、行きたい!と言い続けて来たがそのたびに母に危ないからと断られていた。
しかし、ずっとそう繰り返し言ってきた結果今日来れるようになったのである。

だが、
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