NOVEL

□僕の隣
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【優しい世界】

夢を見た。
この夢を見るのはいつ以来だろうか?
そこは暗い場所だった。時折、断罪の炎にも似た萌葱色の雷光が走り、暗い世界を照らす。
そこのいるのは僕一人。誰もいない、誰もいなかった。

そう、僕はひとりぼっち………

ライは、ゆっくりと目蓋を押し開き暗い部屋の天井を仰いだ。
夢だった。そう考えても残り香が強い残滓は、先程の夢を頭の中に呼び出す。
それは、なかなか消えはしない。
消えてくれと言っても消えてはくれまいに。
寝ていたベッドの枕元にある時計に目をやった。時計の針には蛍光塗料が塗ってあり、暗闇の中でも正確に時を知ることが出来る。安物で年代も相当古いやつだ
が買ってみると、意外にもよく使っていた。

AM 2:12

日も昇りさえしない時間でしかも深夜だ。ライは目の瞬きを繰り返しながら闇を見つめていく。
次第に、寝室の中にあるものが闇の塊ではなく、形をもった物質に構成されているということがわかるまでに目が慣れた。
しっかりと像を結ぶ眼窩で自分の横を見ると自分の片腕を枕にして眠るコーネリアの姿が映り、ライは静かに微笑んだ。
必要以上な動きと音を作ってしまうと、起こしてしまうかもしれない。
だから本当に…そぉっと、彼女の顔に掛かった前髪を指で掻き上げる。
すると、綺麗な顔が露わになり、ふと出したい言葉も、内だけに留める。
普段のその人では考えられない無防備な寝顔を間近で眺められるのは自分だけに与えられた特権だと何度も思うのも悪くはない。
「んっ………」
髪を掻き上げる際に爪の先がほんの少し当たってしまったか、コーネリアの体が微動する。すると、彼女の両目がうっすらと開いて、ライを捉えた。
「どう……した?」
「あ、すみません。起こしました?」
ライは起こしてしまったことに対してすぐに謝ると、コーネリアは緩く首を振ってすぐに許した。
こんな光景、三年前には考えられなかったことだろう。特派から親衛隊へと入隊し、コーネリアと共にいる時間が増えていくにつれて不思議な感じがライを包んでい
った。彼女と供にいる安心感、己の部屋に帰り、彼女のことを想うと胸に隙間が空いたような感覚。それが、彼女に対して抱いていた恋心と気が付いたのはいつ頃だろうか。
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