NOVEL

□Happy Days.
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皇 神楽耶は思う

今日はいつもより、嬉しい日。
いつも、いなかった人が自分の後ろにいるのだ。
これほど嬉しい事は無い。

激化するブリタニア軍との交戦で、普段なら基地にいる時間帯なのに遊びに来てもほとんど顔を合わせる事が無く、すれ違いも少なくない。

それほど忙しいという事だ。
だから、嬉しいのだ。
彼は私の愛しい人なのだから。
彼といてつまらない事は無い。

だけど…今日は少しだけ退屈でつまらない日かもしれない。

彼――日本解放戦線で少尉の地位を持つイシカワゲットーに構える基地の前で偶然にもバッタリと会い、神楽耶は出会い頭に抱きつき、彼を驚かせた。
そして、片瀬少将から世話係を命じられ、一緒に部屋の中に入れば、ライは一つしかないシングルベッドに腰掛け、自分で買ったと思われる本を読み始めた。
神楽耶もライの後ろに座り、背中を預け合うようにベッドへ腰掛けた。
ライは本に目を通して、神楽耶は退屈そうに天井を眺めていた。
本当なら、本など読ませずに色んなところを案内などをしてもらうはずなのだが。ここ最近、彼は十分な休みを得ていないということを他

の兵から聞いていたせいか読書の間だけでも神楽耶は静かにしようと心がけていたのだ。
ライと一緒にいられるとあってか、神楽耶の顔はいつも以上に綻んでいた。電灯の光と相俟って、彼の灰銀の髪が美しく見える。
天井から視線を移動させて、ライをちらちらと見てはくすりと笑っていて、今の彼女は実に楽しそうだ。
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