NOVEL

□不機嫌の後の御機嫌・前編
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今日の夜は静かさが目立つ。
先程まで綺麗だった月が雲に隠れてしまった事で見えなくなり、
草が風で流れる事で奏でられる小さな音楽がC.C.の鼓膜を震わせる。
夜に映える緑の髪を流れる風と遊ばせながら彼女はもう一人の共犯者――ライの部屋が見える外で佇んでいた。
学校内を徘徊中、ここ最近珍しくライを見かけることが無かったことに気づき、彼の部屋が見える場所まで行くと
窓のカーテンが閉まっていた。とある雑誌で軽く読んだ程度だが、
カーテンが引かれているというのは、今は会いたくないという意思表示らしい。
だが、C.C.にそんなものは関係なかった。例え喧嘩したからと言ってカーテンを引かれようがドアを打ちつけようが、
遠慮なしで部屋に入り込んで大好きなピザを食べる。それが彼女のやり方だ。
だが、今回は妙だ。今日はどうしたものだろう。
喧嘩をした記憶は無いがもしかしたら怒らせるようなことをしたのだろうか?
部屋を片づけを行う際に部屋から出るように指示されても素直に従ったし、ピザの箱の片付けも手伝うようにした。
自分が考えられる限りではライを怒らせることはしていない。
そうであれば、気にする必要は無い・・・・はずだが何故か気にせず入る気にはなれなかった。
心当たりが無い時ほど不安に思うことは無い。原因さえ分かっていれば解決法などいくらでもある。しかしその原因がわからなければ手の打ち様が無かった。
クラブハウスに入り、ライの部屋の前で足を止める。
扉を開ければ、すぐにライがいる。そう思って少し開けて中を覗き込んでみる。
いつもなら点いているはずの電気は消され、部屋は暗かった。

(もう寝たのか?)

しかし時刻はまだ夜の8時で寝るには早すぎるしこの時間帯は起きているはずである。
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