リボーン

□君が生まれた日
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沢田綱吉には昔から大切にしているものが一つある。


「ツナ君、それ随分古いよね?大切なもの?」

「え…?」



本日は10月13日、綱吉の誕生日前日であり、横暴な家庭教師の誕生日でもある。
今年は忘れないようにと、本日合同でパーティーをする事になったのだが。
別に、綱吉は不満はない。だってその方が明日、恭弥さんの所に行きやすいし。
そう綱吉は思っている。

「いつも大切そうに、眺めてるよね!だから思い出深いものなのかな?って思って」

パーティーに参加してくれた、ある意味親友と呼べる笹川京子に指差されたものが携帯。ではなく、携帯に付けられた小さな小鳥のマスコットが付いたストラップ。
まだ携帯なんてものを持っていなかった頃は、机の引き出しの鍵に付けていたが。
持ち主の想いを感じてか古びていて、色も大分褪せてはいるが、大切にされているのが分かる位綺麗なままだ。

「これはね、初めて家族以外の人に貰った誕生日プレゼントなんだ」

思い出というか、思い出されるのは不機嫌そうな雲雀の顔だ。
それは雲雀と出会って間もない頃、奈々と綱吉でそれとなく聞き出した誕生日を盛大に祝った事がある。
かなり面食らった雲雀は、誕生日なんて祝われた事なんてないし、特別な日だとは思わない。祝われる理由なんて分からない。と言ったのだった。
それに沢田母娘は似たような顔立ちをキョトンと傾げた。

「あらあら、恭君にとっては特別じゃなくても、祝う私達にとっては特別な事なのよ?」

「ツナ、きょーやさんに会えて嬉しいです。嬉しいから、生まれてきてくれてありがとうって言うのに理由なんていらないですよ?」

これに雲雀は驚いた顔をすると、やがてそっぽを向いて小さく有難うと呟いた。

それから約5ヵ月後だ。雲雀が沢田宅を朝一で訪ねてきたのは。
不機嫌そうに差し出されたのが小さな包み。
本当なら12時時になったその時に訪ねたかったのだが、綱吉が起きてる筈もなく、奈々にも迷惑だろうと朝一の訪問となったのだ。、
寝呆け眼で目を擦る綱吉は不思議そうな顔をした。


「僕は誰かに贈り物なんてした事がない。君に何をあげれば良いのか分からないんだ」

不機嫌なまま差し出された包みを開けると、そこには小さな小鳥のストラップ。

「かわいいです!!」

思わず叫んだ綱吉にホッと表情を緩める雲雀。
実はただ単に、緊張で顔が険しくなっていただけなのだが。

「今日は君の誕生日だろう?奈々から聞いた」

だけどいまいちおめでとうの一言が出てこない。
そんなもどかしさを味わう雲雀だが、、綱吉は気にもせずに感動して勢い良く雲雀に抱きついた。

「うれしーです!!オレ、家族以外にはじめてプレゼントもらえました!!」

恥も外聞もなくぎゅうぎゅうと抱きつく綱吉に、散々悩んでいるのが馬鹿らしくなって、雲雀は随分下にある綱吉の頭を数回ポンポンと軽く叩くと幾分疲れたような声で、

「うん、とりあえずおめでとう…」







「あらあらつっ君、何を描いてるの?」

一心不乱に白い画用紙にクレヨンで何かを描いている綱吉に奈々が声をかける。

「とりさんときょーやさん!!」

満面の笑みで差し出された画用紙には、お世辞にも上手いとは言いきれないが、十分に気持ちの籠もった二つの絵が描かれていた。
その絵を、綱吉はすぐに雲雀にあげてしまったのだが。
その後の行方は綱吉には分からない。





思い出の中にどっぷり浸かっていた綱吉を京子の声が引き上げる。

「でもその鳥さん、雲雀さんの小鳥とそっくりだね!」

思い出してみれば、このマスコットとヒバードとは良く似ている。それを雲雀は知っているのだろうか?


「……まさかなぁ」


あの人は自由な人だ。あの小鳥のことだってたまたまだろう。
そう結論付けると、せっかく開いてくれたパーティーを楽しもうと過去から意識を切り離した。




続く

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