戦国BASARA長編夢
□妖歌月譚:蒼
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戦乱の世の小国にある姫がおりました。
赤みがかった栗色の長い髪に大きなアーモンド型の同じ色の瞳、高めな身長に丸みのある身体の線。
周囲に言われるまま反論すらしない静かなる女。
姫は国の将、狩俣の血縁ではなく、領内の農村より狩俣の物珍しさによる戯れにて連れて来られました。
彼は姫をあやかしだと嘲り、従者はみなそうやって見ました。
そして姫を側に置く事により、あやかしすら統べる将を自負しておりました。
姫は狩俣の命により歌を歌わされました。
その声はまわりの者を魅了します。
狩俣は姫にあやかしの歌、妖歌と本名などお構いなしに名付け、呼びました。
回りの女と違いすぎる姫は、いつしか、妖歌の人形姫と呼ばれておりました。
妖歌はあやかし、あやかしは不浄のものとされ、祈祷士は祓われるまでの半年間はひと月に二度、清泉で禊ぎをするよう告げ、狩俣は信じて従いました。
そのため姫との間に関係はありませんでした。
禊ぎには姫につけられた３人の侍女が従いました。
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続いていた禊ぎも半年が経とうとしていた頃。
いつものように私は禊ぎに出て泉に浸かっていた。
「Ha！アンタが妖歌の人形姫か〜」
木立の合間から男の声がした。
「何奴!?」
「無礼なっ!!」
「姫様!!こちらへ!!」
眼光が鋭くなる侍女達。
「…目的は何ですか？」
私はうろたえず、顔も向けずに言う。
「アンタだ、姫サン？」
軽口を叩く男。
こちらが警戒しているのも気にせず歩み寄ってくる音がする。
どう見ても狩俣の手の者ではない。
「首…好きにすればいい」
「「姫様ァ!?」」
淡々と言葉を吐き捨てると侍女達はうろたえる。
「hyu♪ だが俺が欲しいのは首じゃねぇ」
予想外の言葉にも驚く事なく言われた。
「何であろうとも構いませんが条件が。のめば大人しく従う」
でも、そんなのおかまいなし。
「条件…？」
女４人殺める程度、戯れに付き合う余裕があって当然だろうと思っていた。
だから、乗って！
「この者達に新しい名を与え、ぬしの領地へ逃がして」
何とか毅然と言えた。
「嫌です！姫様、なりません!!」
「姫様!!我らも共に！」
「命に代えても姫様だけは!!」
侍女達は泉に踏み込む。
「be cool。殺らねぇって言ってんだろ？」
水音を立て、男も泉に踏み込んだ。
殺されなくても、私に何かあれば、仕えている侍女達がどうなるか。
それを思うと我が身への恐怖より強いものが。
「このあやかしによく仕えてくれました。もう…」
私、知ってた。あやかしとして嘲りの対象たる自分に仕える、人である侍女までもがあやかしの使いと蔑まれていた事。
だから、解放したかった。
「姫様！そんな!!」
瞳を閉じ、くるり、私は男に向き直り一言。
「よしなに」
皆無ではない我が身の恐怖に、わずか震えながら頭を垂れた。
声を上げる侍女達を留めた。
「私１つの命で貴女方３つ救う事ができるのです」
静かに強く言い放つ。