*TSUBASA‐K×F‐*
□くらし
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そして早速、婚姻届を出すべく役所に向かった。
当然、小僧と姫の、だ。
まさか偽装結婚をするために現地の女をナンパする訳にもいかない。
しかしそこで俺たちは驚くべき光景を目の当たりにした。
婚姻推進課、と書かれた窓口には何組かの夫婦予備軍が並んでいたが…そのうちの半分ぐらいは同性同士だったのだ、どう見ても。
「この世界での婚姻は異性間だけではないんですね」
小僧が驚いたように言う。
「そうみたいだねー。あ、ほら、あそこ見て」
魔術師が示した先には真面目な顔で飼い犬同士の婚姻届を提出する家族がいた。
「何でもありだな」
呆れて呟くと白まんじゅうの悪ふざけが始まった。
「それならモコナ、黒りんと結婚しようかなー」
「異種族はなしだろ」
「えー、なんでなんでー?」
黒鋼とちゅー、などとふざけたことをほざいて近寄って来る白まんじゅうを叩き落とす。
「わー、黒りんの、照・れ・屋・さ・ん♪」
「てめぇ…いっぺん死んでみるか…?!」
俺と白まんじゅうがやり合っている間に小僧たちは窓口に到達し、手続きを済ませたようだ。
何故かあわあわしている小僧と姫、そしてにんまり笑っている魔術師。
手にした書類をひらひらと振りながら俺に差し出す。
『以下の者は本日をもって夫婦であると認める。小狼、さくら』
同じ書類がもう1枚あった。
そしてそちらには…。
『黒鋼、ファイ』
と、書いてあった。
そしてこの新婚生活ごっこが始まった、という訳だった。
「なるほど、おまえがそうやってべたべたしてくるのも姫の羽のために仕方なくって訳だ」
わざとそんな意地の悪いことを言うと布団を叩いていたファイの手が止まった。
しばらく待っても何も言わないから、いじけてしまったかと布団から顔を出すと、ファイは頬を赤らめて俯いていた。
予想外のことに戸惑う。
「なんだよ?」
「…黒さまのばーか」
「あぁ?!」
ファイは頭突きみたいに俺の胸に飛び込んで来ると、ぽそりと言った。
「折角2人きりなんだから…くっついてたいじゃん」
「………!」
「…黒さまは仕方なく、かもしれないけどねー」
へにゃんと笑うファイを、俺は手荒に抱き寄せた。
こういうとき、何か優しいことを言ってやるといいのだろうなとは思う。
思うのだが…柄じゃないものはどうしようもない。
その代わりに、俺は華奢なこいつをしっかりと抱き締めて、貪るように口付けた。
「…んっ……」
舌を絡めとり吸い付く深いキスを送ると腕の中のファイが小刻みに震え始める。
嫌がってる訳でも、もちろん寒い訳でもないことはわかる。
しかし苛めずにはいられない。
性格が悪いとつくづく思う。
「どうした?寒いなら髪乾かして来いよ」
しかし今度は相手の方が上手だった。
「寒くはないけど…黒さまあたためてー?」
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