*TSUBASA‐K×F‐*

□ほうかい
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街を歩いていた黒鋼は、雑貨屋の店先での店主と客の会話を聞き、足を止めた。

「国王軍が町外れの宿屋を襲ったそうですよ」

「まあ・・・また誰か連れて行かれたのかしら」

「泊まっていた旅の人が連れて行かれたとか・・・」

黒鋼の表情が強張った。
肩の上に乗って機嫌良く歌っていたモコナも大人しくなる。

「・・・白まんじゅう、走るぞ!」

そう言うなり、黒鋼は宿の方に疾走した。




「黒鋼、あれ・・・!」

宿が見えてきたとき、モコナが泣きそうな声で叫んだ。

「玄関が、吹っ飛んでやがる・・・」

黒鋼も一瞬呆然と立ち尽くしたが、無言で宿の残骸に駆け寄った。

「誰かいないのか!」

思い切り叫ぶと、瓦礫の陰からさくらを抱いた小狼が出てきた。

「小狼!さくらどうしたの?」

モコナが2人に駆け寄る。

「姫は気を失っているだけです!それより、ファイさんが・・・!」

「・・・魔術師が、どうした?」

「国王軍に拐われてしまいました・・・!」

黒鋼は一瞬押し黙ったあと、小狼たちにくるりと背を向けて走り出した。

「黒鋼さん・・・!1人では無理です!」

「てめえは姫を守ってろ!」

止めようと叫ぶ小狼に振り向きもせずに怒鳴って、黒鋼は国王の城にたった1人で乗り込んだ。




「あーあ・・・」

ファイはため息をついた。

気が付いたら全裸で大きなベッドに寝かされていた。
両腕両足全てがベッドの脚に縛り付けられていて身動きもできない。

特に痛むところはないから、撃たれたと思ったのは麻酔銃か何かだったのだろう。

「・・・まぁ、さくらちゃんがこんな目に遭うよりいいけどねー。オレなら妊娠の心配もないしー」

そう呟いたとき、ドアが開いて男の人が入って来た。

「目覚めたか」

「あんまり寝心地はよくなかったよー」

「そうか。なに、心地良くなるのはこれからだ」

そう言ってその人はファイのいるベッドに上がってきた。

「君はこの国の人間ではないね。名前はなんと言う?」

「ファイ・D・フローライトですー。あなたは王様ですか?」

「そうだよ。君みたいな美しい青年は、国をあげて歓迎する」

そして、国王の手がファイの白い肌に伸ばされた。
胸をまさぐられ、もう一方の手でいきなり自身を弄られ、ファイは不快感に身を震わせた。

(気持ち悪い・・・)

だが、逃れたくてもせいぜい腰を僅かにずらすことぐらいしかできない。

萎えた自身をくにくにと揉まれて乳首をくりくりと転がされて、嫌悪感に吐き気すらしてくる。

「緊張しているのかな」

国王が不敵に笑って、一度ベッドから離れた。
そして何かのビンを手に戻ってくる。

「素直になれるようにしてあげるよ」




「・・・っ、はぁ・・・ぁあ・・・」

「もう声を出すほど気持ちいいか?」

「・・・っ」

自身にたっぷりと塗り付けられたのは媚薬だったのだろう。
身体が熱くなって、軽く扱かれただけで自身はびんびんに勃ち上がってしまった。

「ココももうこんなに濡らして・・・イヤラシイ子だな」

ファイは屈辱に唇を噛む。
こんなやつに触られて気持ちいいはずなんてないのに、身体が言うことを聞かない。

「・・・ひゃぁっ!」

「ふふふ、先っぽから蜜が溢れてくるよ。ここが気持ちいいのかな」

「さわ、るな・・・!」

「そんなにイヤラシイ声で喘いでいるくせに。感じているんだろう」

「ぅぅっ・・!」

ファイは必死に涙を堪えた。
泣いたって面白がらせるだけだ。

(汚れたオレを、黒さまはもう抱かないだろうな)

そう思うと絶望して、絶望した自分に更に絶望した。

(もともと、希望なんか持って生きる資格なんてないくせに・・・)

いつの間にか、黒鋼のあたたかさに心を溶かされかけていた。
一緒に生きていけるなんて勘違いしかけていた。

だから、これは罰なのだ。


・・・上の空になったファイに焦れたのか、国王はファイの足の拘束を取り、いきなり挿入しようとしてきた。

「いや、だ・・・」

ファイの唇からひきつった声が漏れた。

(黒さま・・・助けて・・・)

ファイがぎゅっと目を閉じたとき、物凄い音がして部屋のドアが壊された。

「誰だ!?」

そう叫んだ国王は、一瞬で切り捨てられた。

「くろ、さま・・・」

黒鋼は無表情で、ベッドに横たわるファイを見下ろした。

「・・・帰るぞ」

そしてそれだけ言うと踵を返して出て行った。

「動けるんだったらとっくにそうしてるんだけどなー」

ファイは苦笑しながら呟いた。
少しして、見るからに不機嫌そうな黒鋼が戻って来た。

「・・・悪いけど、腕解くの手伝ってくれるかなー」

へにゃっと笑って見上げると、黒鋼はおもむろに刀を抜いて近寄ってきた。

さっと刀を振ってファイの自由を奪う鎖を斬ると、無言で部屋を出て行ってしまう。

(殺してくれる、訳ないか・・・)

ファイはため息をついてベッドから起き上がると、身支度をして黒鋼を追った。






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