*TSUBASA‐K×F‐*

□のろい
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宿に戻り、黒鋼はぐったりとしたファイをベッドに横たえた。

小狼たちは出掛けているようで、姿が見えない。

「おい、大丈夫か?」

黒鋼がそっと肩に手を添えて問い掛けると、ファイはびくんと震えた。

「くろ、さま・・・へいき、だから・・お願い、1人にして・・」

潤んだ瞳で黒鋼を見上げながら、ファイは苦しげに訴えた。

「なんでだよ?!あれは何の術なんだ?おまえ死にかけてんじゃねえか!」

黒鋼の剣幕に、ファイは困った顔をする。

「・・だいじょ・・ぶ、だから・・くろさま、おねがい・・・」

黒鋼は苛立ったように床を拳で殴り付けたあと、ファイの身体を荒々しく抱き締めた。

すると、ファイはびくっと震えて悲鳴をあげた。

「あ、ああぁんっっ!」

それは・・・悲鳴と言うよりは、喘ぎ声だった。

黒鋼は驚いてファイの顔を覗き込む。

ファイは真っ赤な顔で俯いた。

「・・・生き物を、・・んっ・・強制的に・・っっ・・発情させる魔法、なんだよ・・・。だから、死んだりしないから・・ぅぁっ・・・おねがい、1人にして・・・」

黒鋼は呆気に取られてファイを見ていたが、状況を理解すると、ファイの服を脱がせようとした。

「だったら、抜いてやる」

しかし、ファイは必死で暴れて黒鋼の手から逃れた。

「・・だめ、だよ・・ぁっ・・魔法が、解けるまで・・んぅ・・イけないように、なってるから・・・」

「なんだよそれ・・・。その下らない魔法はいつになったら解けるんだ?」

「魔力の・・強さにも、よる・・ぁぅっ・・けど・・1週間、ぐらいかな・・・」

「1週間?!」

既にすっかり欲情しきっている様子のファイは、もどかしそうに腰を震わせている。
股間は服の上からでもはっきりとわかるほど膨らんでいて、黒鋼が寸止めして苛めた時とも比べ物にならないぐらいツラそうだ。

ただでさえ敏感で感じやすく堪え性のないファイを、こんな状態で1週間も放置していたら狂ってしまうだろう。

「おまえの魔法でなんとかならないのか?!」

黒鋼の問いにファイは小さく首を降った。

「・・ごめんね・・」

「・・・・・」

黒鋼は絶句した。

・・・性的な羞恥心の強いファイは、自分がここにいれば自由に喘ぐこともできなくて余計に辛いだろう。

そう思った黒鋼は、苦しそうなファイを残して部屋を出た。




黒鋼は、飛ぶような勢いで先ほどの小屋まで走った。

小屋に着くなり先ほどの小人をつまみ上げる。

「てめえ!あの訳のわからない術を解け!」

小人は黒鋼の剣幕にも全く動じずけらけら笑う。

「あの魔法は1週間たつまでは解けないよーだ!」

「切り刻むぞ!」

「へへーん、あの男の人、焦らされ過ぎて気が狂って壊れちゃうかもねー♪」

・・・黒鋼の中で何かがキレた。

「・・・言い遺すことは、それぐらいか」

黒鋼の殺気にさすがの小人も慌てたのか、機嫌を取るように黒鋼にすりよってきた。

「あの魔法、1つだけ解く方法があるよ!」

「なんだと?」

「えっと・・・そーしそーあいの相手とえっちして、しゃせーしたら、魔法は自然に解ける、って書いてある!」

自分の身体よりも大きな魔術書を読みながら小人が言った。

「でも、あの魔術師さんならそんなことぐらいわかっただろうから・・・いないのかな、そーしそーあいの人。ちなみに、そーしそーあいの人じゃないとしゃせーできなくて余計に苦しむんだって!」

小人の言う「そーしそーあい」が「相思相愛」で、「しゃせー」は「射精」のことだと気付くと黒鋼は呆然と立ち尽くした。

ファイは魔法がいつ解けるかも、射精できなくなっていることも把握していた。
小人の言うように解き方も知っていた可能性が高い。

(・・・それなのに、俺は拒まれた・・・)

「人間のおにーさん?」

黒鋼は、不思議そうに自分を見ている小人にはもう目もくれずに、再び飛ぶように宿に戻った。






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