*HASHIRA'S*

□始まりの章
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手塚が、氷帝学園の跡部の家からふらふらと出てくるのを、リョーマは信じられない思いで見た。

『手塚は跡部のペットやで?知らんかったん?』

同じく氷帝学園の忍足にそう聞いたのは昨日のこと。
リョーマは手塚が道の真ん中で倒れそうになるのを見て、慌てて駆け寄った。

「部長!」

「・・・越前?・・・こんな所でなにをしている?」

手塚はいつも通りの綺麗な顔でリョーマを見た。
だが、首や腕に縄のあとがしっかりと残っている。

リョーマは心の中で何かが燃え上がるのを感じた。

跡部の家に怒鳴り込みに行こうかとも考えたが、こんな状態の手塚をおいてはおけなかった。

リョーマはちょうどやって来たタクシーを止めて、手塚を押し込んだ。
自分の家に着くと、リョーマは手塚を自分の部屋に引っ張り込んだ。

「越前?どうかしたのか?」

平然と聞いてくる手塚を、リョーマは思い切りにらみつけた。

「なんであんなヤツに好き勝手させてるんすか?!」

怒気もあらわに問う。

「・・・・・・・」

手塚は俯いた。
「部長?!あいつが好きなんすか?対等に付き合ってるって言えるの?!」

「・・・・・・・帰る。」

長い沈黙のあと、手塚がぽつりと言った。

リョーマは、立ち上がろうとする手塚をベッドに押し倒した。

「誰にでもそういうことさせてるわけ?」

リョーマは手塚の腕に残っている、痛々しい縄のあとに触れた。

「・・・・・おまえには、関係ないだろう。」

冷たく言い放たれる。

「部長、あいつが好きなの?」

リョーマは感情的にならないように注意して言った。

「・・・・・・・・」

「あいつは部長の恋人?」

「・・・・・・・・」

「部長、あいつを愛してる?」

「・・・・・・・・」

「あいつは部長のこと愛してるの?」

「・・・・やめろ!」

急に手塚が怒鳴った。

「おまえには関係のないことだ。」

「関係あるよ。」

間髪入れずにリョーマが言い返す。

「俺、部長が好きだから。今までだって何度も襲いたいと思ったけど我慢したんだよ?そんなことしたら部長、嫌がると思って。なのに酷いっすよ。」

「・・・・・・・・俺は、おまえに好かれるような人間ではない。」


「そんなことどうでもいいよ。俺は部長が好きなの。」

リョーマは手塚の体に体重をかけて、押さえ込んだ。
両手を頭上にまとめて押さえつける。

すると、手塚が怯えたような表情を見せた。

「怖いの?」

リョーマは手塚の服を乱暴に脱がせた。

「部長・・・・」

キスしようとして、リョーマは気付いた。

手塚の体は恐怖に震えている。
頬には涙がつたっていて、目はリョーマを捉えていない。

リョーマはやっと、忍足の言葉を理解した気がした。
「ペット」という意味を。

手塚にとって、触れられることは恐怖でしかないのだろう。

どのくらいの間酷いことをされ続けているのだろうか。




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