*HASHIRA'S*

□リョ塚D
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小さな、悪戯のつもりだった。

たまには何もしないでゆっくり眠りたかった、それだけだったのに…。




「越前」

「なんすか?」

「…のどが渇かないか?」

「そ?エアコンのせいかな。何か持ってくるから待ってて」

リョーマは読んでいた雑誌を伏せて置くと立ち上がり、部屋を出て行った。

手塚は…部屋のドアが閉まるのを見るなり部屋の隅に置かれていた自分の荷物を引き寄せ、中から小さな白い袋を取り出した。

中に入っているのは睡眠導入剤。

それを1錠手の平に隠して荷物を元に戻し、手塚は緊張しながらリョーマを待った。



「お待たせ」

リョーマが紅茶とシュガーポットの載ったお盆を持って戻ってきた。

手塚は微妙な表情になる。

リョーマが持ってくるのが冷たい飲み物だったら、こんなことはやめようと思っていたから。

幸か不幸か紅茶からは湯気がたっている。

「部長?どうかした?」

「い、いや…珍しいな、おまえが紅茶を用意するなんて」

「たまにはね。でもミルクとかレモンとかどこにあるか知らないから」

「ああ、構わないさ」

手塚はリョーマがいつも使っているカップを手に取った。

「砂糖はどれくらい入れる?」

「んー、てきとーでいいっすよ」

「なんだそれは」

苦笑しながら、紅茶に砂糖を入れる。

リョーマの様子を伺いながら手の平に隠していた錠剤も落とし、念入りにかき混ぜた。

「どうも」

無言で差し出されたカップを受け取り、リョーマはそれを机の上に置いた。

「…飲まないのか?」

自分用のカップに少しだけ砂糖を入れて混ぜながら、平静を装って尋ねる。

「ちょっと冷ましてから」

「…そうか」

手塚は緊張を気取られないように、とりとめないことを口にしながらのんびり紅茶を飲んだ。




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