*TSUBASA‐K×F‐*

□いでたち
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朝。目が覚めたら、ぬいぐるみになっていたーー。





「…なんだ、これ…」

目が覚めて、普通にベッドから降りようとしたら、足が床につかず思い切り落下した。

訳が分からず自分の足を見ると、どこぞの女が連れていたあの青くて不気味なぬいぐるみそっくりの丸っこい足が見えた。

「…………」

恐る恐る手を見ると、やはり綿がしっかり詰まってそうな丸っこく青い手が、明らかに自分の肩からはえている。

「………………………」

…いったいなんの呪いだ。

ベッドに戻ろうにもそれはまるで小山のように高く、よじ登ることもできそうにない。

床に這いつくばったままどうしたものかと思案しているとぱたぱたと誰かが近付いてくる足音が聞こえた。

「黒鋼さん…?」

ノックのあと部屋を覗きこんだのは姫だった。

もう出かけちゃったのかな、と呟きながら、床に落ちているぬいぐるみ(俺だ)を不思議そうに手に取る。

「犬…?…狼?」

首を傾げて俺を見つめて呟くと、俺の身体をベッドに横たえて、姫は出て行った。

しばらくして、今度は魔術師が部屋を覗いた。

「黒たーん、どこにいるのー?」

迷子の黒ぽーんなどとふざけたことを言いながら部屋に入ってきたファイはベッドの横で足を止めるとまじまじと俺を見た。

「…あれー、これは確か、いおりょぎさん?」

そしてひょいと俺を抱えあげる。

「ねーねー黒さま、どーしていおりょぎさんのコスプレしてるのー?」

「……なっ……?!」

驚きのあまり思わず声が出た。

へらへら笑う魔術師を正面から見る。

「…俺が、わかるのか」

ファイは目を丸くして、それからくすりと笑った。

「わかるよー。…例えどんな姿になっても、俺にはわかる」

「……………」

柄にもなく目頭が熱くなった。

…と思った瞬間、俺は自分の姿に戻っていた。

「わぁっ…!」

抱き上げていたものが急に重くなって支えきれなくなり、ファイがベッドに倒れ込む。
自然とファイを押し倒したような体勢になった。

「わー、いつもの黒さまだー」

俺の下でへにゃんと笑うファイをぎゅうっと抱き締める。

「ん…っ、黒さま、苦しいよ…」

苦しげな声も気にせず唇を貪るように奪う。

「ぅん…っ…ぅ…」

逃げようとする舌を絡めとり吸い付く。
腕を頭に回してくしゃくしゃと撫で回しながら好き勝手に魔術師を味わい尽くした。

「…んー…っ…むぅ…っ…」

小刻みに震えだした魔術師が必死に首を振るから、仕方なく口付けを終わらせる。

「…っ…はぁ…はぁ…っ…はぁ………」

苦しげに息をついて、ファイは恨めしそうに俺を見上げた。

「もぉー!くろさま、いきなりどうしたの?!」

「……………」

俺は少しの間のあと、真っ直ぐにファイの目を見つめた。

「おまえが欲しいんだ。抱きたい、今すぐに」

…目をまんまるにしてフリーズするファイは、とても可愛かった。







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