*TSUBASA‐K×F‐*
□ほうかい
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「黒さまー、ちょっと休もうよー」
「あぁ?まだ大して歩いてねぇだろ」
「さくらちゃんがばててるよー」
「・・・しょーがねぇな」
「ファイやさしー。黒鋼やさしくなーい」
「黙れ!」
「きゃー、黒鋼が怒ったー!」
オレたちはまた新しい次元で羽の情報を探している。
自分のペースで先を行く黒鋼を宥めて、みんなで街の中の小さな喫茶店に入ったところだ。
「・・・旅の人かね」
飲み物を運んできたおじいさんが一番はしに座っていた黒鋼に話しかけた。
「あぁ、そうだ」
「気を付けなさい。この国はいま、荒れているから」
「戦か?」
「いや・・・先頃、王妃様がお亡くなりになられたのだ。その後、国王様は人が変わったように・・・次々に国民を拐うようになってしまってな・・・」
「・・・殺すのか?」
「命を取りはしないさ。だが、既婚者だろうが幼かろうが見境なしに夜の相手をさせているという話だ」
「外道だな」
「あんたの連れも綺麗な顔立ちだから、充分に気を付けなさいよ」
黒鋼が喫茶店の店主の忠告をみんなに伝え、まだ夕刻だが早々に宿を取った。
「危ない国なんだねー。明日はどうしようか。さくらちゃんを外に出すのは危険かも」
オレの言葉に小狼くんも頷く。
部屋の隅で刀を磨いていた黒鋼が口を開いた。
「明日は俺が羽を探しに行く。小僧とてめぇはここで姫を見てろ」
「モコナはー?」
「そうだねー。黒たんだけじゃ羽を見付けられないから、モコナも手伝ってあげてくれるー?」
「任せとけ!」
「黒たんよかったねー」
オレの言葉に黒鋼はふんっと鼻をならした。
翌朝、黒鋼とモコナを見送って、残ったオレは何をするでもなくぼんやりしていた。
小狼くんとさくらちゃんは部屋で話しているようだ。
「つまんないなー。・・・黒さま、早く帰って来ないかなー」
お茶でもいれようとキッチンに立ったとき、物凄い音がして部屋の壁が吹っ飛んだ。
咄嗟に身を翻して衝撃から身をかわす。
爆発であいた穴から次々に武装した兵士が入って来た。
胸に国王軍と書かれたエンブレムがついている。
隣の部屋から、悲鳴が聞こえた。
「さくらちゃん・・・!」
・・・さくらのもとに駆け付けようとしたファイに、兵士の1人が小さな銃を向けた。
乾いた音とともに、ファイの細い身体は床に崩れ落ちた。
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