*TSUBASA‐K×F‐*
□のろい
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「ねー黒さまー。あっちにおもしろそうなお店があるよー」
「遊びに来たんじゃねぇんだぞ」
「そうだけどさー、少しぐらいいいじゃない。ねーねー、黒さまー」
ファイと黒鋼は羽の情報を求めて街を歩いていた。
賑やかな繁華街ではしゃぐファイと、いつも通りの仏頂面で歩く黒鋼。
「ねー、ちょっとだけ・・・黒さま?」
ファイは唐突に立ち止まった黒鋼を訝しげに見た。
「どうかした?」
「・・・ともよ」
「え・ ・・?」
黒鋼の視線の先を辿ると、長い黒髪が美しい小柄な美少女がいた。
「・・・あぁ、あの子黒たんの世界にもいたの?可愛い子だね。黒たんの妹?」
「ちげぇよ。・・・行くぞ」
「ちょっと黒さま?!待ってよー」
足早に歩きだした黒鋼を、ファイは慌てて追いかけた。
宿に戻り、街の反対側を探索していた小狼たちと情報を交換する。
町外れに住んでいる小人の男の子が、最近妙な術を使うようになったらしい。
「羽の力かもしれないね」
「そうですね」
「じゃあ、明日早速行ってみようか」
さくらは今日1日歩き回ってすっかり疲れてしまったようなので、明日はファイと黒鋼で町外れまで行くことになった。
そして次の日。
黒鋼とファイは町外れにある小人の小屋に向かっていた。
昨日と違って、ファイにはあまり元気がない。
黒鋼もどこかうわの空なようだ。
2人とも、昨日見たあの美少女のことを考えていた。
(黒さまの、恋人なのかな・・・)
ファイは小さくため息をついた。
(オレのこと、好きって言ったくせに・・・)
黒鋼は黒鋼で日本国の知世のことを考えていて、ファイの様子に気が付かなかった。
小人の小屋に近付くと、ファイは小さく身震いした。
(これは、魔力・・・?)
「どうかしたか?」
怪訝そうな黒鋼にファイはへにゃっと笑って見せる。
「なんでもないよー。早く羽を見付けて帰ろ?」
そしてファイは嫌な予感を振り払うように、小屋のドアを一気に開けた。
そのとき。
小屋の中から閃光が弾けるように溢れ出て、ファイの身体を包み込んだ。
「おい・・・!」
黒鋼が慌ててファイの身体を引き寄せる。
「大丈夫か?!」
「・・・あーあ、やられちゃった」
ファイはへにゃんと笑った。
「黒さま、これただの魔法だと思うよー。ここには羽はないんじゃないかな」
そう言ったかと思うと、ファイはずるずると崩れるように倒れ込んでしまった。
「おい!」
慌てる黒鋼の前に、モコナより少し大きいぐらいの身長の小人が現れた。
「ははは、引っ掛かった引っ掛かった!」
「てめえ、何しやがった!」
「こんなのちょっとしたいたずらだよー!その人も魔術師ならわかると思うけど」
「たたき切るぞてめえ」
向かって行こうとした黒鋼の服の裾を、ファイが弱々しく掴んで止めた。
「くろ、さま・・オレはへいきだから、お願い・・・連れて帰って・・・」
「どこか痛むのか?!」
「違うよ・・・その子の言う通り、これは命に関わるような魔法じゃないから・・・」
そう言うファイはひどく苦しそうだ。
息もあがっているし、頬も赤い。
発熱しているようだ。
黒鋼は少し迷ったが、ファイを抱き上げるとけらけらと笑う小人を睨み付けて、宿までの道を急いだ。
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