*TSUBASA‐K×F‐*

□つながり
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「はぁ・・・」

ファイはひとりの部屋でため息をついた。

黒鋼に悪戯されてから、もう1ヵ月近くたつ。

あれ以来、手を出されることも抱き締められることもなく、今まで通りの関係が続いている。

「・・黒りんの世界では、男同士であーいうことするの、普通なのかなー」

ちょっと・・いや、かなーり、特別だったんだけどな・・・オレ的には。




・・・魔術師の様子がおかしい。

いつも通りへらへらしてやがるが、以前よりももっと・・何と言えばいいのか、何だか壊れそうな感じだ。

「めんどくせぇやつだな・・」

黒鋼はため息をついて、磨いていた刀をしまった。

白まんじゅうと騒いでいる魔術師の腕をつかむと・・びくっと、身をすくめられた。

そのくせ次の瞬間にはいつものてきとーな笑みを張り付ける。

「黒さまどーしたのー?オレとモコナが楽しそうにしてたから拗ねちゃった?」

俺は無言で魔術師を睨み付け、自分の部屋に引きずっていった。

白まんじゅうがきゃあきゃあ騒いでいたが、知ったこっちゃねえ。

「黒りん、痛いよー」

魔術師の言葉には耳を貸さず、華奢な身体をベッドに放り投げる。

「もー、黒わんわんのらんぼうものー」

苛々して殴り付けそうになるのを必死で押さえながら、何を考えているのかわからない蒼い瞳を睨み付けた。

「・・黒たん、何怒ってるの?」

「てめぇが約束を守らねぇからだ」

吐き捨てるように言うと、魔術師は困った顔で笑った。

「・・ごめんね。ムリだ、オレには・・・」

「なんでだよ」

「・・期待、しちゃうから。オレ弱いから・・ごめんね」

・・・意味がわからない。

いよいよ苛ついて、俺は魔術師の胸ぐらを掴んだ。

「・・黒ぴっぴ」

こんな状況にまったく似つかわしくないふざけた呼び名で呼ばれ、俺は脱力感に襲われながら目で続きを促した。

「・・・黒ぽんはさー、ううん、黒ぽんの世界ではさ、男同士でこの前黒りんがオレにしたようなことするの、普通、なのかな」

「普通、じゃねぇだろうな」

「じゃあさー、この前のは特別?」

やけに明るい声でそう言ったあと、魔術師はそれを恥じるように俯いた。

・・こいつもしかして、何もわかってないのか?

ふと生まれた一抹の不安は考えれば考えるほど間違いないと思われた。

「・・誰にでもあんなことする訳ないだろ。それも男同士で」

「そうだよねー。じゃあさぁー、黒たんにとってオレってもしかしてちょっと特別?」

俺は呆れて、魔術師の身体を離した。
魔術師は何の抵抗もなくベッドに落ちる。

その身体に馬乗りになって、約1ヶ月ぶりのキスを奪う。

「俺はどうでもいいやつを支えようとしたりはしねぇ」

めんどくせぇ、と吐き捨てると魔術師が驚いたように目を見開いた。

「様子がおかしいと思ったらそんなことで悩んでやがったのか」

「そんなことってひどいなー。・・・あれから黒さま全然かまってくれなくて、オレ寂しかったんだからね」

俺はちょっと驚いた。
こいつが自分の感情を素直に口にするなんて思わなかったから。





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