*TSUBASA‐K×F‐*
□はじまり
1ページ/4ページ
「黒たーん♪」
「・・・」
「黒むー♪」
「・・・」
「黒わんわーん♪」
「・・・」
「わーん、黒さまが無視するー」
・・・戯れることはできても、すがることは決して赦されない。
わかっているのに。
「ファイさん?!」
「・・・え?」
サクラちゃんの声で我に返り、チョコレートが小鍋で煮たってふきこぼれていることに気付く。
「あ・・・」
慌てて火を止める。
「ごめんねー、失敗しちゃった」
ふにゃっと笑って見せたけど、この感受性の強いお姫様は騙されてはくれなかった。
「ファイさん、何だか疲れてるみたい。今日はもう休んで下さい」
「へいきなんだけどなぁー」
結局、半強制的にベッドに送り込まれてしまった。
「あーあ・・・」
眠ったって、どうせ悪夢しか見ない。
それでも暗い部屋で横になっているうちに、いつの間にかファイは眠ってしまった。
・・・おまえのせいで、不幸が訪れる
おまえのせいで。
おまえのせいで!!
生きているだけで、おまえは人を不幸にする!
「・・・おい」
唐突に、悪夢から引きずり出された。
「・・・くろ、さま・・・?」
黒鋼がひどく不機嫌そうな顔でベッドサイドに立っている。
「あー、うるさかった?ごめんねー」
笑顔を貼り付けて見上げると、黒鋼はますます不機嫌そうになった。
「もー、黒りんこわーい」
「・・・・」
鋭い眼差しに射すくめられ、ファイは内心ため息をついた。
→