*F×other*
□寒い夜だから
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「あーーーー・・・」
長太郎は一人で悶えていた。
冬休みで学校は休みだが部活はあるので早く寝ないといけないのだが、寒さがひどく堪えて寝付けない。
もちろん暖房はつけているし暖かい羽根布団にくるまってはいるのだが、冬はなぜだか人恋しくて苦手だ。
「周助先輩、まだ起きてるかなぁ・・・」
24時過ぎだからまだ起きてはいるだろうが、夜中に寂しいから電話するなんてよほど可愛い女の子じゃないと許されない気がする。
悩みに悩んだ末、メールを送ることにした。
「えーっと・・・周助先輩、こんばんは。今日も寒いですね。風邪ひかないように気を付けてください。俺は明日も部活です。おやすみなさい、と・・・」
我ながらなんて下らないメールなんだろうと思ったが、勢いで送信ボタンを押した。
「家が近くだったらいいのになぁ・・・」
せめて同じ学校だったら。考えても仕方がないことを思いため息をつく。
そのとき。
携帯電話が鳴り出しびくんと震えるほど驚いた。
「えっ・・・周助先輩から・・・電話?!」
慌てて通話ボタンを押す。
「はいっ、鳳です!」
思わず点呼のような返事をしてしまい赤面した。
電話の向こうから周助先輩の柔らかな笑い声が聞こえてきて、泣きたいほど嬉しくなる。
「こんばんは、長太郎。何してるの?」
「え、えっと・・・寝ようと思ったんですけど、何か寝付けなくて・・・」
「そっか。明日は早いの?」
「お昼からなのでそんなに早くはないです」
「じゃあ夜這いに行こうか?」
笑いながら言われて絶句する。
冗談とわかっているのに心臓が切なく疼いた。
「・・・長太郎?」
黙ってしまった俺を気遣うような声に目頭が熱くなる。
「あー、ごめんね、余計に寂しくなっちゃった?」
・・・余計に?
「あのメールで寂しいって読み取れないほど僕は鈍感じゃないよ」
「・・・・」
周助先輩の優しい言葉に胸が熱くなった。
会いたい。
たくさんキスして、抱き締めてほしい。
それから・・・
無理なのはわかっているのに、周助先輩のぬくもりを思い浮かべて身体がほてってくる。
「もしもし、長太郎?」
周助先輩の怪訝そうな声で我に返った。
「どうしたの?大丈夫?」
「何でもないです・・・会いたいなって、思って」
思い切ってそう言うと、周助先輩がくすりと笑う。
「珍しいね、長太郎がそんなこと言ってくれるなんて」
「だって・・・」
「発情期なの?」
「なっ・・・」
甘い声で問われ、耳が熱くなる。
ひどい。会えないのに、煽らないでほしい。
「テレフォンセックスでもする?」
周助先輩が信じられないことを言い出して俺は絶句した。
「長太郎?」
くすくす笑う周助先輩。
「俺・・・そういうの、できない・・・」
とりあえず回答すると周助先輩の不思議そうな声。
「いや、とかじゃなくて、できないんだ?」
だって。
「・・・俺、自分でしても気持ちよくなくなってきて・・・周助先輩の手じゃないと」
つい正直に答えてしまい途中で我に返って顔が真っ赤になった。
「あっ!周助先輩っ!いまのなしっ!」
何てことを言ってしまったんだろう。
「長太郎」
焦りまくる俺を周助先輩が遮る。
「それ、本当?」
「・・・はい・・・ごめんなさい・・・」
「どうして謝るの?」
「だって・・・引いたでしょ?」
「まさか。嬉しいよ。でも長太郎、したくなったときどうしてるの?自分で抜けないってこと?」
「う・・・」
「長太郎?」
「・・・そうです・・・」
「じゃあ、ひとりのとき欲情しちゃったらどうしてるの?」
「どうしようもないから、寝ます・・・」
「・・・・・」
周助先輩は暫く黙り込んだあと、すごく優しい声で言った。
「長太郎、いま出られる?」
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