*F×other*

□乙女心
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貴方は、優しくてかっこよくて、綺麗で強くて…

俺なんかが恋人で、本当にいいのだろうか。




「あれ、鳳くん?」

夏休み。部活帰りに駅前をぶらぶらしてたらクラスの女の子に会った。

「…あれ…村山、さん…?」

「ちょっとなぁに、その間はー?」

「ご、ごめん…」

確かにその子は同じクラスの村山さんだ。

だけど…見慣れた制服姿じゃなくて、涼しげな素材のふわっとしたワンピースに華奢なサンダル、いつもは2つにまとめている長い髪をおろしている姿はまるで別人だった。

今日はデートなの、と幸せそうに笑うその子を見て、俺は思った。

こんな子の彼氏は、きっと幸せだろう、と。




俺はそのまま駅に近い大きな本屋に直行した。

きょろきょろと周りを見回しながら、女性向け雑誌のコーナーに向かう。

目についた雑誌に手を伸ばしたとき、セーラー服の女の子たちが近付いてきて、慌てて手を引っ込める。

たまたまこの通路にいるだけですよ、女性雑誌なんて読みませんよ、という素振りで携帯を取り出し、メールチェックをするふりをする。

女の子たちが通り過ぎて、俺はほぉっと息をついた。

…これじゃまるで不審者だ。

苦笑いしながら再度書棚に目を戻す。

愛され夏ガールだとか彼の心を撃ち抜くモテかわ水着特集だとかきらきらした文字が踊る表紙には、例外なく着飾った女の子の写真が使われている。

「…これ持って、レジまで行くのか……」

早くも心が折れそうだ。

その時、棚の端の方に、某有名アニメのヒロインの絵が書いてある雑誌を見つけた。

表紙には、特集・愛されヒロイン徹底検証とある。

その雑誌は他の大部分のものと比べると、字体もデザインも比較的落ち着いていた。

…俺がこれを買っても、モテかわ水着よりずっとましだ。

俺は瞬時にそう判断し、最後にもう一度周りを見回すとその雑誌を手に取ってレジまで全力疾走した。






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