たまーに更新するにっき


◆サレ小説投下 蜜

周りのものなんて全て嫌いだった。
否、嫌いだと思うことすらなかった。

よく「好きの対義語は嫌いではなく無関心だ」なんて言うけれど、まさにそれだと思う。

興味がなかった。この街にも、国にも、周りの奴らにも。



夜中にさっさと仕事を終わらせたのは良いが、そのまま寝付けず結局太陽が昇ってしまった。

立ち止まって廊下の窓から空を見上げてみても、太陽を拝むことなどできないのだけれど。

この街の空はいつだって鉛色だった。

冷酷で血も涙もないと言われる自分にぴったりじゃないか、と苦笑を漏らし、サレは髪をくしゃりとかきあげる。


深夜にこなした仕事は、いつもと同じような仕事だった。

暗闇、悲鳴、生温い赤。
もう、何人もこの手で奪ってきた。命を。

これから動かなくなる人間のことなんて考えなかった。奪った命に興味が無かった。与えられる仕事をこなすだけだ。興味なんてない。仕事をこなす自分にさえ。

どうでもよかった。

唯一好きなのは、人の苦しむ顔だった。
苦しみ喘ぐ声、痛みに寄せられた眉。
何故かそれらは心臓を揺さぶった。
好きかどうかなんてわからない。ただ自分ではこの感情を、好きと呼ぶのだろうと、ずっと思ってきたんだから。



「サレ!こんなところにいた!」


姦しい叫び声が廊下に響き渡るのと同時に、ぎこちない歩き方でこちらへ向かって来る少女。

最近森で発見した、フォルス能力者だ。

ヒューマで若い少女、しかも記憶喪失。しかしフォルスを暴走させることなく目の前で使った。

バイラスの攻撃に驚いた時に制御に失敗したのか、フォルスの光が消えてしまった時、いつもの自分ならきっとバイラスの攻撃に成す術も無く傷つく様を楽しんだだろう。

しかし、その日は何の気まぐれか、この子を助けてしまった。


不安に少し潤んだ瞳も、転んで泥のついた頬も、乱れた髪も、全てが興味をひいた。
可愛らしい容姿をしているのは確かだが、容姿に惹かれて助けたわけではない。

どうしてというまでもない。ただの気まぐれだ。


よろけて倒れ込むように僕の服を掴むと、先程まで不満で歪んでいた顔をパッと明るく変えると、

「早く、今日も勉強教えて!」

と、僕の服を引っ張って無邪気にせがむ。
子供のようだと、嫌味を込めて蔑んでやれば、また眉を寄せて怒り出す。


ころころと変わる彼女の表情に少し苦笑しつつ、彼女を置いてさっさと部屋へ向かう。

訓練を受けているとはいえ、まだうまく歩けないのに一生懸命僕についてくる彼女に向かって、今日の勉強プランを山のように伝える。
後ろを振り向いてニヤリと笑って見せれば、顔を真っ青にして黙り込む。

唸り声をあげながらトボトボ歩く彼女をみて、本当におもしろい拾い物をしたと、小さく笑い声を立てた。

2009/11/30(Mon) 04:13

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