第0章
□好奇心
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「そうか…あの娘はもうそこまで…」
「えぇ。日々成長していますよ」
聞き覚えのないしわがれた声と、ユージーン隊長の声が聞こえた。
姿を確かめたくて、隙間から少し中を覗いてみる。
もうここに忍び込んだ時点で何をしても悪い事をした事実は変わらない。
そんな気持ちが、私を大胆にさせていた。
窓には分厚いカーテンが掛かっており、間接照明によるあかりが灯っているだけなので部屋の中は薄暗くよく見えなかったが、アガーテ様の部屋とは比べ物にならないくらい、広い。
それに、ベッドもとても大きい。アガーテ様の部屋のベッドと同じように、カーテンが掛かっていた。
そして、私の目に映ったのは、跪くユージーン隊長と、カーテンの隙間から見え隠れする、蓄えられた立派な髭と、皺だらけの顔。
本や肖像画で見たことのある顔。
――ラドラス・リンドブロム。
アガーテ様の父君にあたる、この国の国王だ。
驚きすぎて、思わず扉を思い切り閉めてしまいそうになったが、ぐっと堪えて唇を噛み締める。
私がこの城に来てからすぐに体調を崩し自室で療病しているらしく、一度もお目にかかったことはなかったが、間違い無い。
想像通り、というか…
それにしても、なんてところに迷い込んでしまったのかと、頭を抱えたくなる。