第0章

□王女様
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Epsode5. 王女様




サレとトーマと、明日からの予定について話し合っている途中、ドアがノックされた。

どうぞ、と声を掛けると、ドアが開き、兵士が2人入ってくる。

「アガーテ様がお呼びです。手をお貸ししますので、アガーテ様のお部屋まで…」

「ほら、お迎えがきたよ」

兵士の言葉を遮り、サレがクスクスと笑う。


「…とにかく、その本全部を今日中に読むのはほぼ不可能だと思うんだけど」

「無理に読めとは言わないよ。ただ、読めなかったらお仕置きが待ってるってことは忘れないでいてくれれば」

サレを睨みつけながらテーブルの上に高々と積み上げられた本の山を指差すと、サレは涼しい顔で本を一冊手に取り、パラパラ捲りながら言う。

「それは無理に読ませるって言うんです!」

ムキになって言い返すと、サレはソファに優雅に腰掛けながら楽しそうに笑い声をあげる。
その隣で、トーマが本の山をまるで汚物を見るかのような目で見ている様子からも、その本の量が異常だとわかる。

「それより早く行かなくていいの?王女様を待たせるなんてどういうつもり?」

サレはどうやら全く私の言い分に耳を貸すつもりはないらしい。
今はサレに抵抗することより、アガーテ様の部屋へ行くことを優先したほうが良いと悟り、兵士の手を借り立ち上がる。

「…これは、私に早く知識を付けさせてあげたいというサレの愛だと思って甘んじて受け入れることにします」

「そんなつもりは毛頭なかったんだけど、それで君の気が済むならそれでいいんじゃない?」

本の山を見つめ、自分自身を励ますかのようにわざと穏やかな口調で呟くが、取りつく島もなく即座にサレに否定された。


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