第0章

□霧の街
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Epsode3. 霧の街




しばらく歩くと、霧の奥にぼんやりと街の外形が浮かび上がって見えた。

「あれが目的地の、王都バルカだよ」

サレがぼんやりと浮かんだシルエットを指差し、説明してくれる。

トーマに背負われたまま、王都をよく見ようとその背中から身を乗り出した。
バランスを崩したトーマから怒られたが、構わずそのままの体勢で目を凝らす。

王都だというのだから、王国で一番栄えた場所。どれだけ煌びやかな城がそびえているのだろう。
洗練された街並み、賑やかな人々。

私は期待に胸を膨らませた。


しかし、近付けば近付くほどうっすらと見えてくるのは、とても王都だとは思えないほど薄暗く、鉛色の雲で覆われた街だった。

道中も霧がひどくて気分が滅入ったが、王都の周辺になれば晴れるものだと思っていた。
しかし、王都の目の前まで来ても、霧は晴れるどころか濃くなっているように思える。

霧が深すぎて、数メートル先も見えない。


「…本当にあの街が王都?」

心配そうな声色で尋ねると、サレは、面倒くさそうに振り返る。


「そうだよ。薄暗くて重苦しくて素敵な街だろう?」

サレは、さも楽しそうにクスクスと笑いを洩らす。


「ほら、もう着くのだからおとなしくしていろ!」

「うわ!ちょっと待って…わあああああ!」

トーマが鼻息荒く溜息をついて諌めるように言うと、身を乗り出していた私を一旦投げて体勢を整えた後、落ちてきたところを乱暴にキャッチすると、もう一度抱えなおした。

やはりトーマはヒューマが好きではないらしく、私に対する扱いが少々乱暴であり、気が向けば私を罵っていた。

「ヒューマの小娘のくせにフォルス能力者とは生意気な」

とか、

「森で倒れていたとは貧弱な娘だ」

等と道中ブツブツと言われたが、サレに気にしないように言われていたのであまり気に留めないことにした。

二つの種族は仲が悪いこともあるそうだ。

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