Vocaloid SSS

□恥ずかしいから
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弱気リンと自称イケレン(変態)




ヘッドホンから流れる、アップテンポの曲調と、力強い歌声。

"よその家"の鏡音リンが歌っているこの曲は、どうやらロードローラーのことを歌ったものらしい。

「…ン…く…」

ところどころにアクセルやブレーキの音が入っていておもしろい。

「レンくん…」

パソコン画面の動画の中では、"鏡音リン"が気持ち良さそうにロードローラーで爆走している。

「レンく〜ん…」

そこでやっと、背後から呼ばれていることに気がつき、振り向く。
そこには、俺の服の裾を遠慮がちにつまみ、今にも泣き出しそうなほど情けない顔でこちらをみつめる、"うちの鏡音リン"が居た。

うちの鏡音リンは、世間で言われる「ロードローラーを乗り回すパワフルで元気な女の子」ではなく、「内気でおとなしい泣き虫な女の子」だ。

ソフト一人一人でも微妙に性格の違いが出るらしいが、うちのリンのタイプは極めて珍しいほうだと思う。

なんだかんだで俺も、そこらでよく見かけるようなリンにやられっぱなしのヘタレンではないし、ショタレンでもない。どちらかというとイケレンだろうと自分では思っている。

というか、この弱気な"リン"と一緒に居れば、必然的に"レン"である俺がしっかりするしかないのだ。

まぁ、動画の中で草原を駆け巡り笑い声をたてる元気な"鏡音リン"も魅力的だが、目の前の頬を赤く染め、大きな瞳を潤ませて唇を噛み締め、困ったように眉尻を下げる"鏡音リン"も最高に可愛い。

じっと顔を見つめれば、途端に挙動不審にあちこち視線をさ迷わせた後、恥ずかしそうに顔を伏せる。

見れば見るほどいじめたくなるような反応をする奴だ。


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