Vocaloid SSS

□だって悔しいんです!
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「…さむっ!」

吐いた息の白さに驚きながら、一人で呟く。
ここ家の中なのに、こんなに寒いっておかしくね?

ぺたりぺたりと、裸足で廊下を歩く。

スリッパを履くのを面倒臭がったのが悪かったらしい。

冬のわが家の廊下は予想以上に冷たく、剥き出しの足の裏から容赦なく身体が冷えていく。

おまけに手にはアイス。

小腹がすいたので台所を物色してみたところカイ兄が買い置きしているアイスを発見し、後先考えずにソーダバーを口に含んだのが失敗だった。

どんどん身体が冷えていく。

でもスリッパを履きに戻るのも面倒だし、アイス手放す気にもなれない。

仕方がない、今はリンが入り浸っているであろうコタツに避難するより他ないと考え、コタツのあるリビングへと向かう。


リビングのドアを多少乱暴に開けると、走ってコタツの中へと潜り込む。
かじかんだ足の裏がじんわり暖められてほぐれてゆくのが心地良い。

ふと隣で同じようにコタツに潜るリンに視線をずらす。
珍しくパソコンをいじってるようだ。

「リンがパソコンなんて珍しいな。なんか調べ物?」

リンの頭に手を伸ばし、自分より鮮やかな黄色い髪をくしゃりと撫でる。


そして気づいた。


なんかリン、機嫌悪い。


いつも彼女の頭の上でピョコピョコ跳ねるリボンはしょぼくれているし、頬を若干膨らませていたかと思えば、時折溜息を吐いている。

おやつがおいしくなかったのか。
メイコ姉に怒られたのか。
レコーディングがうまくいかなかったのか。
マスターと喧嘩したのか。


原因など山ほど想定できるのだが、とりあえず彼女の意識がむけられているパソコンへと視線を落とす。


すると彼女の先には、自分とは同じであって異なる存在、いわゆる「よその家の鏡音レン」が居た。



動画の中で踊りながら歌っている。



…スクール水着を着用し、涙目で、もじもじしながら。



「っぎゃあああああああああああ!!」



自分自身のことではないにしろ、「鏡音レン」の痴態。

この動画によって全世界に発信されているという事実はあれど、リンには見られたくなくて、思わずノートパソコンを勢いよく閉じる。

今、自分の顔は真っ赤であろう。あるいは真っ青かもしれない。
全身から冷汗が噴き出している。

リンはというと、強制的に閉じられたノートパソコンを意味もなく見つめていたかと思うと、ギッとこっちを睨みつけた。

この動画を見たことによって、俺の機嫌が悪くなることはあっても、どうしてリンが怒ることがある?

あまりの恥ずかしさに顔を引き攣らせながら、自分を睨み続ける片割れを見つめる。

本当に、わけがわからない。


と思っていたら、

「レンはずるい!」


と叫びながら、自分と同じライトシーグリーンの目を潤ませ、赤く染まった頬を膨らませた。

やばい、可愛い。等と余計な思考が頭を廻るが、今はこの片割れの不機嫌の理由を明らかにするほうが優先事項だ。


「ず、ずるいってなにがだよ!こんなキモい動画見てなにがどうなってるかさっぱりわかんねぇよ!」


言っているうちにまた恥ずかしさが込み上げてきて、思わずソーダアイスを膝の上にボトリと落とす。

せっかくこたつで暖まった身体にアイスの冷たさが電流のように走り、思わず「ヒャヒィッ!」と悲鳴を上げた。

しかしリンはそんなことはお構いなくまたノートパソコンを開き、動画の中で涙目で顔を真っ赤にしながらスク水で「ご主人様」等とほざいている俺を見るなり、突然

「レンはショタで人気が取れてずるい!」

等と叫ぶ。


「ロリンよりショタレンのほうが良いの!?そんなことよりチビミクのほうが良いの!?プチミクが可愛いのっ!?」

大きな目に涙をいっぱいに溜めて、震える声で叫ぶリンはやっぱり可愛かったが、この屈辱と、アイスによってベタベタになった膝と、再び冷えた身体をどうしてくれる、という気持ちで頭がいっぱいになった。

――ショタで人気取れたって嬉しくねえよ!!


口に出すとリンが泣き出しそうなので、心の中で盛大に悲鳴を上げた。


>>>back


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プチミクの動画は伸びているのに
チビ鏡音の動画は伸びないことに腹を立てて思い切って書いた。後悔はしていない。
元は漫画で描いた話なんですが何度描いても紛失するので文章にしてみた。オチなし。




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