第0章
□煩悶
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あの任務の日から、私はサレとなんとなく距離を置くようになってしまった。
距離をおくといっても、前に訓練から逃げたように、任務から逃げたりしてサレを避けているわけではない。
サレやトーマと自分の気持ちが、前より離れてしまったような気がするのだ。
もう私は王の盾。
しかも四星の部下。
任務は遊びではない。
それくらいのことは、わかっているつもりだ。
「気持ちが、ついていかない…」
自室のベッドで枕を抱きながら身を転がし、溜息混じりに呟いた。
前だったら無遠慮にサレがくつろいでいたソファーは、座る主を無くして寂しそうにそこにある。
あの任務以来、サレが私の部屋に立ち入ることが無くなってしまった。
自分を拾ってくれた時の、あの蔑んだ目。
おもしろそうだから、なんて理由だけれど、記憶を無くして歩けなかった自分をここまで連れてきてくれた。
全て自分が教えるのは面倒だという理由だけれど、他の四星に私を紹介してくれた。
いたぶるのが楽しいからなんて理由だけれど、私に訓練してくれた。
最近では、ちょっと不器用なだけで、実は優しい人なんじゃないか、なんて思っていたのに。
『お前は今まで誰ひとりとして生かした試しがないだろう…』
トーマの言葉が、頭から離れない。