ギャグマンガ日和

□believe.
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ある日、とうとう堪え切れなくなって僕は家出をした。


・・帰ったら怒られるのは分かっていた。
怒られる程度じゃ済まない事も。


でも、どうしてその日は耐えきれなかった。


「僕は捨て子じゃないよ!」


そう叫んで家を飛び出した。


・・勿論、僕を追ってきてくれる人なんて居なかった。


―何処かに自分を愛してくれる人が居ると思ってた。


兄弟も、伯母さんも。


いつかは僕の事を好きになってくれて、
そんなコトをずっと考えてた。


なのに、どうして?


いくら勉強を頑張っても、伯母さんは兄弟を贔屓するばかりで一つも褒めてくれない。



川辺に寝そべって空を見つめた。
あの空の向こうに母さんは居るだろうか・・・そんなコトを、ぼんやり考えていると、


「どうしたの?」


後ろでふわり、優しい声がした。


振り向くと、髪を後ろで束ねた一人の青年が僕を見つめていた。


「・・別に。」


ぶっきらぼうにそう答える僕。
その人は、そうかと優しく微笑んで言った。


「綺麗な夕日だねぇ・・・」


何時の間に、と僕は思った。
さっきまでぁんなに明るかったのに・・・
僕はどれくらいの間、ココで泣いてたのだろう?


見上げると、無数のオレンジの光が僕を包んだ。


(何だか、気持ちいい・・・)


こんな温かい気持ちになったのは初めてで、思わず身震いをしてしまう。


「ありがとう」


自然と出る感謝の言葉。


久しぶりに緩む僕の口元。


「・・どうしてお家に帰らないの?」


「だって・・みんな僕を捨て子だって言うんだもん」


青年は沈黙を保った後、また話し始めた。


「この世界に『捨て子』なんていませんよ。
皆、誰かの子供です。愛される権利があるんですよ」


「嘘だ」


「決まり。今日から君は私の子だ」


「何言ってるんですか?」


「弟子になる?ってコト」


「ますます意味が分かりません。
何で僕が見ず知らずの貴方に・・・」


「随分厳しい子だな〜・・・ま、良いや。
また会いたくなったら何時でも来て良いからね。」


「待って!
・・名前はなんて言うんですか?」


「松尾芭蕉だよ。
さ、早くお家に帰りな」



僕は捨て子なんかじゃない。


その事実が嬉しかった。


それからは伯母さんに何を言われても平気になったし、彼の事を考えるだけで口元が緩んだ。


―20歳になったら会いに行こう。


いつか出会った、あの素敵な人に・・。
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