ギャグマンガ日和
□プルメリア〜花唄
2ページ/3ページ
初めてその人を見た瞬間、少し胸が高鳴ったのを覚えている。
・・何故だろう?ロクな人間じゃないってコトは分かっているハズなのに・・・
「初めまして、このたび遣隋使に任命された小野妹子です」
緊張している訳でもないのに、全身から汗が止まらなくて、声は乾きそうなほどカラカラで、嬉しいような、泣きたいような気持ちになって――
それは、今思えば僕の運命が大きく変わってしまった瞬間で、鼓動が高鳴ったのはきっと・・・
この世に偶然なんてないと言うけれど、
そんなコトはない、無いハズはないんだ。
あるのは、偶然と必然のみ。
僕が彼に出会えたのは、ほんの『偶然』
僕が今凄く幸せなのは、神様からの『必然』
こんな生意気なコト言ったら、誰かに怒られそうだけどね。
でも、太子に出会う前の僕は、今はもう何処にもいない。
弱虫で、どうしようもなく惨めだった、あの頃の自分は。
「太子の夢はな、隋が戦争もなくなり平和になるコトなんだ」
―ふと、竹中さんの言葉を思い出した。
戦争がない世の中か、平和好きの太子が言いだしそうな言葉だな、と僕はそう思った。
今も、この国には争いが絶えない。
みな、地位と金を欲しがっているから。
その為に人は争い、同じ過ちを繰り返す―
こうしている間だって、誰がいつ殺されるか分からない。
僕の五位という冠位に嫉妬して刃を向けてくる輩がいないなんて断言はできない。
「太子・・・」
愛しいその名を、そっと呟く。
いつか、貴方の夢が叶いますように。
いつまでも、貴方のその笑顔が、隣に有りますように。
―その瞳に、儚げな未来が映る時にも僕がそばにいる
いつまでも そういつまでも
だから大丈夫さ
そしてこの歌がこの歌がいつか流行の歌にしおれていっても構わない
君は変わらず花唄で聞かせてくれる
君が変わらず、この歌を愛してくれる