ギャグマンガ日和

□有心論
1ページ/2ページ

「どうして、姉はこんな邪魔な子を産んだのかしら。本当に迷惑だわ。オマケに、今まで怨んでいた私に押しつけるんだもの。


姉は、アナタと同じでダメな子だったわ。
いつも親に叱られて、勉強もロクに出来なくて。何の取り柄もなかったのよ。でも、アタシは違ったわ。勉強も出来て優秀で、本当に両親の自慢の華だったのよ」


何度聞かされたか分からないその愚痴に、
僕は何も言えず、黙って耐えていた。


この人は、僕の継母。
母親も父親も死んで、僕はこの人の家に預けられた。
思い出したくもない、地獄の日々―


「ねぇ、これは言ったかしら?
親子には遺伝というモノがあって、
それを受け継ぐとその子供も―」


「・・僕、100点取ったよ・・・
先生にも、「曽良君は他の子とは違って勉強出来るのね」って言われたんだよ」


「他の子より?」


ありえない、と伯母さんは吐き捨てた。
見たこともない、恐ろしい形相で―


「そんな訳ないわ!私の子の方が優秀に決まってるじゃないの!なんてひどいコトを言うの、この捨て子が!!誰がアンタの世話をしてやってると思ってるの?!」


パシッ
頬に、痛くて熱い衝撃が走る。
悲しみで、涙腺の切れる音がした。


「ウッ・・・」


駄目だ、こらえなくては。
涙を見せたら、負けてしまう。
大丈夫、いつかはきっと、伯母さんは僕の事を認めてくれる―


「本当に虫の良い子ね。
泣けば済むと思ってるの?」


抵抗すればするほど、伯母さんの暴力はひどくなった。
僕に、兄弟はいない。
だから、頼れる人はこの人だけだった。


死にたくない。
でも、こんな辛い日々、もう嫌だ。


逃げしたい、と何度そう思った事だろう。
いくら頑張っても、誰からも認められなかった僕。


彼女の支配から、逃れる事が出来なかった僕。


「お前は、ダメな母親の子供だからな。
それに母さんは、ダメだったお前の母親を疎んでいたんだ。

捨て子って可愛そうな響きだよな?

この世にいらないって、お前を産んだ奴がそう思ったんだよ。

誰にも一生愛されないなんて、凄く哀れだよね。

僕がお前じゃなくて、本当に良かった」



…。


聞きなれた、義兄弟の言葉。
信じたくなくて、耳を塞ぎたかった。


「どうしたの?」


「!?」


「どうして泣いてるの?」


「…」


「このぬいぐるみあげる」


差し出されたのは、変な熊の人形。
何処らへんが変かというと、ぐったりしてる所。普通のぬいぐるみは、こんなにぐったりはしていない。


「・・ぁりがとう」


「良い子でね」


今でも忘れられない、

だってその人が、

今隣で笑っている人なんだ。


思ってもみない。
その時、僕を救ってくれたその人が、
もう一度僕の目の前に現れるなんて。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ