銀魂
□悲しみの嘘
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「お前は弱いから。
お前と兄ちゃんは一緒にはなれないんだよ」
―今でも、私の心を引き締めるその言葉。
あの日の光景を思い出すたびに、今でもあの人の面影を探してしまう。
「・・ぐら?」
…!お兄ちゃん!?
「は?」
目の前にいたのは,銀髪クシャクシャのダメ侍。
「お前、何言ってんの?」
・・・。
何を思ってたかなんて言えるかヨ。兄ちゃんと銀ちゃんなんて、比べようにも似てないのに・・・
どうして間違えたんだろう?
「お前にアニキなんかいたの?
そりゃー初耳だぜ。ホームシックですかぁ〜??」
うっさい黙れダメ天パ。
今思えば、か弱い妹をあんな場所に一人残したアイツは最低ネ。
あんな奴と銀ちゃんを・・・
一緒になんかしたくない。
「会ってみてぇな〜お前のアニキ。たぶんお前に似て大食いでスイーツな頭してんじゃね…「―一緒にすんなヨ」
銀ちゃんの言葉を遮って、私は言った。自分でも吃驚する位の厳しい声で。
「アイツは最低な人間だったネ。
もう二度と会いたくない」
その口調に圧倒されて、銀ちゃんはしばらく口を閉ざしていた。
どれくらい、沈黙が流れたのだろう。
「…でもよ」
先に口を開いたのは銀ちゃん。
ダメ侍には珍しい程の、まっすぐな瞳で私に呟く。
「本当にそいつが嫌いなら・・・憎いんだったら、何でさっきアニキの名前を呼んだんだ?お前はずっと探してたんじゃねェのか・・夢の中でもずっと・・・」
―探していた?
二度と会いたくない人に?
二度と会えるはずのない人に?
「そんなの・・・あり得ないアル!」
私はずっと、お兄ちゃんを探していた?
弱い自分がずっと嫌いだったのも…あの日の事が今でも忘れられないのは…
本当の感情に気づいた時、私は大声で泣いていた。
『会いたい』
今まで鍵をかけてきた想いが、体を蝕んでゆく―
「ちゃんっ・・!」
最愛の人の名前を呼んだとき
目の前のダメ侍が
一瞬、悲しそうな瞳をしたのは気のせいだろうか
何故か私は
兄ちゃんに会えば
この人を失くしてしまうような
そんな気がした