廃児's OtherNovel

□言葉の独占
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「僕らのアリス、君が望むなら」





「ねえ、チェシャ猫…」
私は抱いている首に問いかける。
「なんだい?アリス」
その首はいつもと同じ、裂けた口から黄色い歯を覗かせ、笑っている。
「私は……



誰かだけのアリスにはなれないの…?」



チェシャ猫が少し考え込む。
そして、
「アリスは絶対の存在だから誰かだけのものにはならないよ」
少なくとも僕らの世界の住人のものには。と答える。
でも、私は納得できない。
だったら、せめて…
「“僕らの”って言うのはやめる事は出来る?」
「何で?」
「私はチェシャ猫だけのアリスになりたかったの。でも、それは無理なんでしょ?」
それでも、と、一息おく。
「言い方だけは変えて欲しいなーって思ってさ」
チェシャ猫が黙る。
「駄目、かな…?」
釘をさすとチェシャ猫は笑って言った。
「どうなるか分からないよ?」
「良いよ」
実際、何も起こるわけはないと思っていた。
「言葉の中だけでも、あなただけの私になりたいから」



「僕のアリス、君が望むなら」
















瞬間、世界が歪んだ気がした……
 

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