SS置き場(版権物)
□百々太郎
1ページ/2ページ
ある世界(サーバー)の伐木町ブレンティルという伐採によって生計を立てている町に、剣士とランサーの夫婦が住んでいました。
剣士は伐木場に経験値稼ぎを兼ねた芝刈りに、ランサーはクェレスプリング湖に経験値稼ぎを兼ねた洗濯に行きました。
ランサーが湖に向かって歩いていますと、川の上流から大きな桃が流れてきます。
「ラッキー♪ あれを今日のデザートにしましょう」
彼女は自身の得物である槍を使って、器用に岸まで引き寄せ、桃を手に入れました。
しかし……――
「……これ、宝箱……?」
そう、それは桃ではなく、桃の形をした宝箱でした。
調べてみた所、罠はかかってないようでしたが、鍵はかかっていました。
彼女のLvでは壊せないようです。
そして宝箱用の鍵も持っていなかったランサーは、その箱を持ち帰ることにしました。
自分では無理でも、夫である剣士になら壊せる鍵だったからです。
家に帰ってしばらくすると剣士が帰ってきました。
「ただいま〜…って、どうしたんだ? その桃……」
「お帰りなさい。この桃は拾ったの。宝箱なんだけど、錠が壊せなくて。
剣士は頷くと、ランサーに下がっているよう、手振りで示しました。
彼女が十分下がったのを確認すると、剣士は剣を抜き放ちます。
「――はぁっ!!」
一閃。
銀光が錠を跳ね飛ばします。
鍵の壊れた桃型宝箱は、ゆっくりと左右に分かれました。
そして中身が明らかになります。
「………………」
「……………………これって……」
夫婦は、顔を見合わせます。
無理もありません。
宝箱の中身は、1人の赤ん坊でした。
錠と一緒に中身も壊れたらと思うとちょっと震えが来ます。
夫婦は赤ん坊の身元を調べましたが、結局何も見つからず、その子を育てることになりました。
男の子であったその赤ん坊は百々太郎(ももたろう)と名付けられ、多少…否、職業としてシーフを選んでしまったためにかなり手癖が悪くなりはしましたが、スクスクと育ちました。
そんなある日、百々太郎は町の人からある噂を聞きます。
曰く……
オーガの洞窟に住んでいるオーガは、財宝を溜め込んでいるらしい。