・ 彩雲国物語
□手にした力と離れた時間
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かの第二公子は誰よりも気高く、美しくそして優秀であった―――――
そんなこと、この私は身をもって知っている…
かつて私のプライドを何処までも傷つけ、そして幼い恋心を芽生えさせた………清苑公子
その清苑公子は13年の時を経て、右羽林軍武官シ静蘭として再び私の近くへ還ってきた。
……いや、実際には大切なお嬢様と愛する弟を護るため、
一時的に左羽林軍に籍を入れたからこそ楸瑛の近くにいるわけで、
実際には相手の関心は全くこちらに向いていないのだが………。
その証拠に、静蘭と話すときはなぜかいつも氷の棘で突き刺されるような気分になる。
今日もそうだった。
「や〜あ静蘭。羽林軍での調子はどうだい?」
『藍将軍。はぁ…左羽林軍の将軍はお時間が余りに余っていらっしゃるようですね。
このように意味も無く下っ端武官を捕まえてはおかしな話ばかりするとは・・・』
「んー、君はいつでも冷たいねぇ。そんなツンツンしてちゃせっかくの美貌が台無しじゃないか」
『余計なお世話というものです。私はあなたと違って仕事が残っているため』
静蘭はそっけなく答えてスタスタと去っていってしまった。楸
あなたは昔から私にはとても冷たかったですね。
初対面の一言は『失せろ』、その上『役立たずはいらない』とまで言われてしまったら、
私の矜持が砕けないはずがないではありませんか。
でも・・・、今の私には力があるんです。あなたに命じる権利がある。
あなた無理やり襲う力もあるんですよ・・・清苑公子。