黒髪と蝶々

□空が落ちることについての考察
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空が落ちることについての考察






「うっひゃ〜!!デッけぇ月が出てんぜ」

鉱山の地下で穴掘ってる仕事上、いつも見ない空には今昇ったばかりのような大きな黄色い月。
今日は仕事が一段落ついて外に出られたのだ。仕事仲間のジギーは子供の様に背伸びをして月を眺めている。

ティキとイーズも並んでソレを見上げた。

「マジだ。空ごと落っこちて来そうだな」
ティキが言う。


「…空って落ちるの?」


ふと呟くイーズの言葉にジギーとティキは顔を見合わせる。


「落ちるモンなのか?」
真顔で問うティキにジギーはブフッと吹き出す。

「知らねぇよ!少なくとも俺は落ちたの見たことないぜ」
「だよなぁ。俺も無い。」

ポンっとジギーはイーズの頭を叩いた。

「タトエだよ、タトエ」
「ふーん‥でももし落っこったら?」
「……。」

またジギーとティキは顔を見合わせる。


「…宇宙が見えるんじゃないか?!」

ティキの突然の発言にまたジギーは吹き出す。

「その前に俺ら死ぬだろ!」
「でもよ、あれがこうでー」
「いや、わかんねぇから!!」
ジギーのその言葉にティキは、うーん…と唸って砂利の多い地面にしゃがみこむ。


「空が落ちないといいね」
ジギーとティキはイーズのその言葉に頷いた。
「そうだな、」

「俺らはやっぱ明日へ向けて走り続けることだけを考えてりゃいいんだぜ!なぁ?!」
イーズの最初の質問をかきけそうとする強引なティキの一言に、再びブフーッ!!と吹き出すジギー。


「クセェぞ、ティキ!」
「え?」
しゃがんだティキの頭を小突いてイーズとジギーは歩き出した。


「あ!置いてくんじゃねぇよ!」

「イーズ!クセェのがうつんぜ、走れ走れ〜」
ギャハハハとジギーの笑い声が静かな夜に響いた。


月はいつの間にか高く上って相変わらず辺りを照らしている。






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