霧と雲
□薬指に永遠を願うキスをする
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薬指に永遠を願うキスをする
コツンコツン。
コツンコツン。
窓の外から物音が聞こえて来る。
僕はせっかくの昼寝を邪魔された訳で心穏やかでは無かったが、窓の外からやってきた自由な彼らにはその気持ちをぶつける気にはならなかった。
「やぁ。また来たんだ。」
窓を開けるとバサリと羽根を拡げて、それぞれの場所に散って行く。
一匹は頭の上。
も一匹は肩の上。
も一匹は―――
「‥?」
初めて見たもう一匹の彼は、差し出した僕の掌に乗っかった。
彼は落ち着かない様子で掌に足をペタペタ何度も付けている。少しくすぐったい。
掌を返すと彼は少し羽ばたき、再び僕の手の上に乗っかった。
ツンツン。
固い嘴で僕の指をおもむろにつっつく。
「ん。僕の指がどうかしたかな。」
他の2匹と同じ小さな黒い眼で僕を見る。
何を伝えようとしてるのか、考えたところで答えは出ないのだが、無垢なその存在に口元が緩む。
僕は悪戯に片方の指で黄色い毛を軽くつつき返した。
「……君がつついてるその指はね、大切な誰かとの証を身に付ける為にあるんだよ。僕にはそんな存在邪魔なだけだけどね。」
ゴンゴンッ!
「恭弥ー!」
荒いノックと声が部屋に響く。外にいるのは声から察して、いつも煩い自称家庭教師だろう。数日前から雲の刻印のついた指輪の話だのなんだのと煩いその人は今一番の僕の獲物である。
咬み殺したい相手有力候補である。
「開けていいか?」
といった時には既に応接室のドアは開けられていたのだが、ドアを開けたその音に彼らは驚いたらしく、窓から慌てて飛び出していった。小さな風が身体を掠めていく。
「またおいで。」
太陽が眩しくて遠くを見渡せない空に彼らは直ぐに消えていった。
「さぁ、僕らも始めようか。」
自由を獲る為の遊戯を、
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