霧と雲
□首筋に所有のキスをする
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首筋に所有のキスをする
口を少し開けて、嗚呼、と溜め息混じりの声を上げて僕はベッドに横たわるものに視線を落とした。
そこには自分とは他に荒く呼吸をしている人間の姿。
数時間遊んでやったら抵抗も無く大人しくなった。
その姿の美しいこと。
純粋な殺気だけが瞳から自分に注いで、それは未だに計り知れない程の憎悪を自分に抱いているのだろう。
「クフ‥」
僕は思わず嘲笑してしまう。全く、彼は浅はかな玩具だ。
「もう抵抗は終わりですか?」
僕はソレの隣に腰を下ろし彼の髪を撫ぜた。ソレは触るなと言いたげに手を振り払うように頭を振る。
「もっと楽しませてくれませんか?」
乾いた血痕が付着した彼の唇を指でなぞり、首筋へと移動していく。
「このような所有者と玩具の状況を、ね」
.
パシンッ
パシンッ
頬をはたく音だけが部屋に残る。
音も鳴らない玩具に僕は溜め息をついて、片手で首に手を掛けた。
玩具は表情を歪ませて爪を立てる。微弱な力だった。つまらない。
しかし、息苦しさが呼吸に現れて、それはとても僕を喜ばせた。
抵抗するソレを無理に弄ぶことが酷く快楽を与えた。
必死になっているソレの
苦しそうな顔、
堪える表情、
白い肌に冴える赤の色、
狂ってしまうほどに好きになった。
骸は首筋に噛み付いて玩具に証を付けた。
何度も何度も同じ場所を抉り、その傷を舌で更に堀り返す。
微かに痛みに喘ぐ玩具の口を塞いでやれば身体を震わせて助けを求めてきた。
彼は僕のモノ
壊すだけの僕の玩具
死に向かうだけの快楽の輪舞曲
fin