おりじなる
□海の子 第2章(3)
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「蒼士、ちょっといいか? 話があるんだけど」
朝食を終え、特にすることもなく寝転がっていた蒼士に、竜也は声をかけた。
「なんだ」
蒼士は、いつもの無表情のまま見返す。
「今度の日曜に、俺ちょっと出かけるんだけど・・・」
と、ここで一旦、竜也は言いにくそうに言葉を切る。
竜也が出かけるのはいつものことだ。いったい何だとでも言うように、蒼士は竜也に視線を向けた。
「あ、えーと。・・・い、一緒について、来てくれないか・・・?」
「・・・――は?」
さすがの蒼士も呆気にとられて竜也を凝視する。次いで、いい年した大人が何を言っているんだと、眉をひそめた。
「あー、今度行くとこは、えと、十年前のに関わるもので、だから一人で行くのは不安なんだよ・・・」
「十年前?」
「ああ、わかるだろ」
蒼士は眉根を寄せて、少し考える素振りを見せた。
その様子を見て、竜也は驚いた顔をする。
「えっ、知らないのか!? かなり話題になった事件だぜ。お前くらいの年で知らないなんてあり得ねぇ」
「・・・知らなくて悪かったな」
それが何か悪いのか、といった顔をされ、逆に竜也のほうが困惑した。が、すぐに気を取り直して、
「お前って、本当に変わってるよな」
と、深々とため息をついた。
そして、真面目な顔つきに戻すと、静かに話し始めた。