−夢に呑まれる。−黄金争奪
□You had it. −君が持っていた。『戦う理由。』
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一瞬何が起きたか理解出来なかった。
自分の指が飛び散る光景の後に赤く染まる視界。
今まで幾度も見た色。
消える事のない血液の様な赤。
−暴発したか?
−いや違うな。
先程の銃声。
一瞬だが銃口に何か当たったような感覚。
−銃口に入ったか…。
「殺してやるっ!尾形ぁぁぁぁぁっ!!」
幸いにも鼓膜は本来の機能を果たしているようで杉本の怒り狂った声が聞こえる。
だが見えない。
何も。
突如として感じる背中と左頬の痛みから、倒され馬乗りになられながら殴られているという事がわかる。
「アシリパさんの事…何で裏切ったぁっ!」
次は右、そして左、杉本が馬乗りになりや休む間もなく拳を浴びせてくる。
銃やナイフを使わないところから奴の甘さを感じる。
−“不死身の杉本”…。
笑わせるぜ。
そんな奴の猛攻を止めたのはアシリパの一声だった。
「杉本っ!殺しては駄目だっ!
…殺すのは駄目だ。」
「何でだ?
こいつはのっぺらぼうを…アシリパさんのお父さんを撃ち殺したんだぞ!
こいつは報いを受けて然るべき事をしたんだ!
それとも一緒に行動してて“情”でも移ったの?」
ねぇ、アシリパさん、どうなの?
「私は…どんな理由があっても殺しはしたくない。
役目を全うせずに死んでいく者を見ると心がその分凍りつき死んでいく気がするから、痛い。
とても…。
なぁ、尾形。聞きたい事がある。
私はお前と一緒に行動してきたがお前の必死な姿は初めてだな…。
お前も杉本みたく大切な誰かの為に金塊を探していたのか?」
「私はそれが知りたい。」
アシリパの問いかけに沈黙を決め込んでいると以前怒りの消えぬ杉本の怒号が耳に刺さる。
「答えろよっ!なぁっ!尾形ぁっ!!」
「尾形、理由を聞かせろ。」
対照的なアシリパの口調。
「尾形ぁぁっ!」
口内に溜まった血液を杉本に向かって吐き出し答えた。