−夢に呑まれる。−黄金争奪
□You had it. −君が持っていた。『欲しかったありふれた日常。』
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利き腕をやられた。
銃弾は手の甲と手首の2発。
弾が貫通した際に、大きな動脈を傷つけたのだろう。
持っていた革紐でどんなにきつく縛り止血してもいっこうに止まる気配はなかった。
狙撃してきた奴をまこうと思い近くにあった森に姿を隠して数時間。
少しずつ襲ってくる吐き気と寒気に加え、右の指先はもう死人の様に冷たくなっていた。
パキッ。
何者かが小枝を踏む音。
後ろだ。
左手で銃を構える。
撃てはしないけれど。
「あの…大丈夫ですか?」
女が立っていた。
「…近づくな。行け。
ここで人を見たことは誰にも話すな。」
銃を見て恐る恐る両手を挙げた。
「でも…。」
一歩前に踏み出そうとした。
「さっさと行け。」
声を張り上げると女は一目散に走り去っていった。
人に見られたからにはここにはもういられない。
移動しなければと思ってはいたものの体は鉛のように重く、頭が割れそうに痛んだ。
−これ以上血を流すとマズイ。
そう考えたのを最後に俺は気を失った。