−夢に呑まれる。−黄金争奪

□You had it. −君が持っていた。『一生持ち得ないと思っていた見返りを求めない“自分以外の誰かの為に”という崇高な理由、それを持たせてくれる程の“それ”。』
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「おい、尾形いったい何日もどこほっつき歩いていやがった!
探したんだぞ!」


「…別に。野暮用。」


「何?お前怪我してる?撃たれたのか?」


「別に。大したことない。」


あぁ。

欲しい。

金塊が。

人が一人、一生不自由なく暮らしていける分の金が。

欲しい。


−俺一人では無理だな。

さぁ、役者は揃った。

誰が一番金塊に近い?

誰が一番俺に多く積む?

誰よりも先に金塊を手に入れなければ。

その為に。

どんな事でもしてやろう。


−なぁに。慣れてるさ。


幾らでも殺そう。

幾らでも騙そう。

幾らでも汚れよう。


「今日は殊更冷えるな…。」


女の温もり消えたその手をこすり合わせた。

何度も。

何度も。


−今なら山の彼方の鳥の目玉でさえ撃ち抜ける気がする。

笑みが零れた。









You had it.
−君が持っていた。

『一生持ち得ないと思っていた見返りを求めない“自分以外の誰かの為に”という崇高な理由、それを持たせてくれる程の“それ”。』



Fin.


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