−夢に呑まれる。−巨人

□Pollute this hand! −この手を汚せ!
1ページ/1ページ


「損害は許さん!!一人も死ぬな!!」



巨人共を何体…いや、何人殺した。

そして俺は何人守れた?



「クソ…うんざりだ。弱ぇ奴はすぐ死ぬ。」


本当に簡単に。

あっと言う間に。



「雑魚は嫌いだ。」



奪われる事に抗えない。

どれだけ足掻いても失われる。

あぁ。

そうだ。

考えてみりゃ今までの人生俺は失ってばかりいたんだ。

家族も。

夢も。

友人も。

希望も。

自由も。

仲間の命も。

大切な奴の笑顔も。

俺も大差ないのか…。

奪われて奪われて。

今の俺はその残りカス。

それでもまだこの手で守りてぇモノがあるんだ。

だからもう何一つ。

失ってたまるか。

ここで決着をつける。

もうこの手から零れていかないように。


「チッ…。」


猿野郎め。

どこの誰だか知らねぇが、もうお前等にくれてやる物なんか一つもねぇんだ。

覚悟しろ。

元は人間だとかそんな事は知ったこっちゃねぇ。

その肉削ぎ落としてやる。

人殺しにでもなんでもなってやる。

ただ俺は。

またこいつ等と飯を食う日常を。

愛しい女の生きる世界を。

失わないように。


「…必ず皆でもう一度門をくぐる。」


そしてあいつに“ただいま”と笑いかけてやるんだ。


そう自分に誓い、大きく深呼吸をする。

さぁ。

一人でも多く守りききるために。





この手を汚せ!
Pollute this hand!







Fin.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ