Keep a secret

□ご褒美あげる
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「――ご褒美あげるね?」
「うん……」

 私が頷いたのを合図に時谷くんの手が胸へと伸びてくる。
 膨らみに手を添えてやわやわと揉まれてもブラウスとブラジャー越しだ。手の感触までは伝わってこない。
 刺激だってないはずなのに……雰囲気に飲まれているのか緊張からか、少しむずむずする。
 ブラウスの裾をスカートから引きずり出して直接お腹に触れてきた手は冷たいものの、火照った私の体温で少しずつ温まっていく。

「っ、ま、待って!」

 そのまま片手で器用にブラウスのボタンを外そうとする時谷くんを慌てて制止した。
 教室で脱がそうだなんて何考えてるんだ。誰かが廊下を通りかかった時にさっと衣服を整えられないのは困る。

「舐めたい……」
「だっ、駄目!」
「でも」
「駄目ったら駄目!」

 そんなに不満げな顔をされても絶対無理。私は汗をかいてしまってるんだから。
 駄目だともう一度念を押せば時谷くんはボタンから手を離してくれた。

「ひゃっ!」

 けれど、ブラウスの内側に差し込まれた手にブラジャーの上から胸を鷲掴みにされる。
 そのまま遠慮なく揉みしだかれるとブラウスのボタンが弾けてしまわないか不安だし、蠢く手の動きが目に入って恥ずかしい。

「綾瀬さん、どの机にする?」
「つ、机の上で何をするのでしょうか?」
「何ってわかりきっていることを……あ。僕に言わせたいんですか……?」

 時谷くんはほんのりと頬を染め「もう、綾瀬さんのエッチ……」とでも言いたげな雰囲気でもじもじしている。
 まるで私が卑猥なことを言うように強制しているみたいだ。
 おかしい……卑猥なことを強制されそうになっているのは私の方なのに。

「ごめん! い、言わなくていいよ!」
「それでどの机がいいんですか?」
「え……私か時谷くんの机かな……」
「どっちですか?」

 本当は"何もしない"という選択肢が欲しい。
 しかし、どうしてもどうしても選ばなくちゃいけないと言うのならば――

「じゃあ時谷くんの机で……」
「綾瀬さんって意外と大胆ですね」
「な!?」

 大胆って何!? 異議を唱えようとしたところで時谷くんの指差す先を見て納得した。
 時谷くんは廊下側の一番後ろの席なんだった。誰かが廊下を通れば至近距離で見られてしまうことになるだろう。

「やっぱり私の机にする……」
「それがいいかもしれませんね」

 腕を引っ張られ自分の席まで歩かされる。
 私の席は教卓前の列の真ん中、教室のちょうど中心の位置。特別な長所も短所もない普通の席だ。時谷くんみたいに一番後ろの席に座れている人は勝ち組だと思う。

「綾瀬さん、座って?」

 私の机を指でツーと撫でる、その手つきが性的に見えて仕方がない。
 だって昨日私の体に触れた時谷くんの指先は怖いくらいに器用で、私は……。

「あっ……時谷くん!」

 突然足が宙に浮く。脇の下に手を入れられ、持ち上げられていた。幼い子供相手のような抱き上げ方が恥ずかしい。
 顔の高さが同じになった時谷くんがにこっと微笑み、私は机の上に下ろされた。

 私の顔が熱いのは外気のせいじゃない。もしも赤くなっていたら嫌だな。
 目の前に立った時谷くんの視線から逃げるために俯く。

「綾瀬さん……何考えてるの?」
「っ、ふぁっ」

 不機嫌そうな声とともに手がブラの中にまで侵入してきて胸の先端を摘まれる。
 少し強いくらいの力なのに私の体はそれを痛みより快楽と捉えたのかもしれない。変な声が漏れてしまった。
 健全な精神を持つ私のことを体は相変わらず裏切ってくる。

「……時谷くんのこと考えてたの……」
「え……」

 彼の機嫌を取るためにはどうしたらいいのか何となく学習した私は腹黒い嘘をつく。
 この読みは正しかったらしく、時谷くんは私から手を引っ込めて顔を覆い隠す。赤くなった耳が見えるから照れているんだろう。
 この純情少年のような反応は何なんだ……教室で猥褻な行為に及ぼうとする大胆な人間の反応とは思えないんだが。

「さっきから綾瀬さん可愛すぎますよ。僕を殺す気ですか!」
「い、意味わかんないんだけど」
「これ以上可愛くならないよう自重してください!」
「はあ……自重します」

 必死に抗議してくる時谷くんに戸惑いながらも了承しておいた。

「そ、そういえば遊園地に行くって話はどうなったのかなー? 本当に行くなら早く行った方がよくない?」
「あ、そうですね。早く下着を脱がさないと……」
「嫌……!」

 何で下着!?
 スカートをめくり上げようとしてきた時谷くんの手を掴む。学校で大人しく下半身を晒すわけなかろう。

「綾瀬さん、手縛りますよ」
「やだよ! どうして脱がなきゃいけないの」
「それは……」

 困り顔の時谷くんに食い下がると、時谷くんの手が再びブラの中に滑り込んでくる。

「っ!」
「少し触っただけでもう乳首が固くなってる。これから出掛けるのに下着が濡れたら困るでしょう?」
「ひゃ、んっ」

 私の熱ですっかり温まった手が胸の先端をぐりぐりと潰す。押し潰されて胸の内側に埋まっても時谷くんが力を緩めるとぷっくりと膨らんでしまうのが自分でもわかる。

「脱ぎましょうね」
「……ん」

 耳元で囁かれる悪魔の囁きに、私はどうしてか頷いてしまう。
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