Keep a secret

□支配されたい
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「綾瀬さん、女の子のここも固くなるんですよ。知ってましたか?」
「んっ、あ……知らな、いっ」

 小さな突起が時谷くんの指の間でびくびくと脈打っている。時谷くんの指は私の芯を捉えていた。根元から挟み込んだ陰核をほんの軽く、すりすりと上下に擦り上げられる。
 ソフトな触り方なのに、いや……優しく繊細な愛撫だからこそ悲鳴を上げたくなるほどの刺激が生まれる。

「本当ですか? その割には敏感ですよね。ここを触ったら気持ち良くなれるって知ってたみたいに」
「ち、違う……」

 濡れた陰核をこね回される度にくちゅくちゅと卑猥な音が聞こえる。
 私だって少しくらい自分で触ってみることもあるが、言い当てられるのは恥ずかしくて静かに首を振った。

「いつもどんな風に触ってるんですか。教えて?」

 耳元で囁かれたと思ったら尖らせた舌が耳の中に入ってきて抜き挿しされる。
 ぴちゃっぐちゅぐちゅっぐちゅぅっ
 卑猥な音が脳に直接響いてきて頭がおかしくなりそう。

「し、下着の上から触る、の……っ」
「下着の上から触るだけではイケないんじゃないですか?」

 ……もう本当に勘弁してほしい。こんな無駄な時間を使わずさっさと挿入して終わってくれればいいじゃないか。

「答えてよ」
「っ」

 耳たぶを軽く噛まれて肩が跳ねる。

「そ……だよ。い、イったことない」
「そうでしたか。それなら綾瀬さんの体を満足させたのは僕が初めてなんですね」

 私は強い刺激がなくても満たされていたし、むしろ時谷くんに初めてこの部屋で変な感覚を教えられてからは性的なものに苦手意識すら持っていた。
 あれ以来自分で触る気分にはならなかった。今だって体を無理矢理高められることが恐ろしくて仕方ないのだから。
 そんな私の思いなど知らずに時谷くんは満足そうにほくそ笑んでいる。

「どうして直接触らないんですか?」
「いっ、いい加減にして! そんなことどうでもいいでしょ」
「誰も知らない綾瀬さんの秘密でしょう? 僕は知りたいんです」
「だ、だって」

 答えを促すように太ももを撫でる手をやめてもらいたい一心で口を開く。

「直接だと少し痛くて……っ、んっあっ!」
「もしかして濡れてくる前に加減なく触ったんじゃないですか」
「はっ、あっ……知らな……っ」

 直接触ると痛かったと恥を忍んで明かしたのだから遠慮してくれてもいいだろうに……また無遠慮に私の中心に指を這わされれば思わず声が出てしまう。

「ここも、こうやって濡らしてあげないと」
「ひぁっ、あ……っ!」

 膣口から溢れている蜜をすくい取った指が陰核を撫でて、そこをぬるぬるにしていく。
 時谷くんになら直接触られても痛くない……それどころかすごく気持ち良い。
 敏感な突起を中心に気持ち良いのが全身に広がって、なんだか思考が鈍くなる。

「綾瀬さんの真っ赤なクリトリス、僕の指から逃げようと震えてますよ」
「ク……?」
「クリトリス気持ち良いんですか? 顔も真っ赤っかですね」

 私ので濡れた指でくるくると円を描くように触りながら、時谷くんは恍惚とした表情を見せる。

「時谷くっ、あぁ……っ!」

 時谷くんの指が突然動きを変えた。ぷっくりと立ち上がったそこを指の腹で優しくつままれた後、ぐりぐりと押し潰される。
 こんなの刺激が強すぎる……!

「いいですよ。イキ方覚えましょうね」
「あっやっ、やっ、あ――っ!」

 全身が震えていた。動かせない手を強く握る。足の爪先にまで力が入り、次の瞬間、頭の中が白く弾けた。

「今みたいに様子を見ながら強い刺激に変えていけばいいんですよ。覚えましたか?」
「はぁっ、はぁっ……」
「ん……綾瀬さんの濃い。本気で感じてた証拠ですね」

 まだ頭がもやがかっていて、乱れた呼吸もなかなか整わない。白く泡立った私の愛液で汚れた指を見せつけるように舐め取る時谷くんの姿をぼんやりと見上げる。

「いやらしいですね……可愛い」
「っ」

 耳元で駄目押しとばかりに囁かれ、火照った顔に更に熱が集まっていくのを感じる。

 いやらしいなんてどっちが。
 時谷くんがやたらと手慣れた調子なことも少し悔しかった。
 それが何故か理由はわかっている。時谷くんは私もよく知っている人物と何度も経験したことがあるから詳しいんだ。
 そうやって知ったことを私に教えるの?
 時谷くんのことが好きだと気付いてしまった私に……。

「感覚が戻ってきましたか?」
「あっ!」

 時谷くんはまた平然と陰核に触れてくる。

「や、やめてよ!」
「これはお仕置きだって言ったはずですよ」

 信じられない思いで見つめる私の心中を察したのだろう。時谷くんは疑問に答えた。
 そうだった。時谷くんはあの時……

「僕に気持ち良くしてもらえて嬉しいですか?」
「っ、嫌……!」

 陰核を二本の指で摘んで上下に扱くような手つきで擦られる。それが気持ち良い触り方だって私の体はもう覚えてしまっている。
 イったばかりで脈打っているそこが更に敏感になって私の性感を高めていく
 ……最悪、本当に最悪だ。そんなこと絶対に言いたくないけれど、時谷くんの求める言葉を言わなければこの行為は終わらない。

「お願……だからやめてよぉっ」

 粘着質な液体が纏わり付いてぬるぬると滑るそこへ小刻みに振動が加えられ、執拗に弄られ続ける。

「はぁ、綾瀬さん、気持ち良い?」
「やだぁっ、やっ、うう……っんぁぁっ」

 息を荒くしながら私の顔を見下ろす時谷くんは止めるつもりがない。
 泣きじゃくりながら懇願しても聞き入れてもらえず、私は二度目の絶頂を迎えた。

「はっ……はっ……」

 ベッドにぐったりと横たわる私の涙を舐め取る舌が熱い。膣が痙攣し、どぷどぷと愛液をこぼすのが不愉快だった。

 ……ううん、こんな愛のない無意味な性行為は全てが気持ち悪い。
 "セックス"っていうのは想いが通じ合った者同士で更に愛情を確かめ合う幸せな行為だと思っていた。それが片方に愛がないというだけでこんな不幸せな行為になるだなんて。

 ――誰か助けて。お母さん、ゆかりん、神様、助けて。優しかった頃の時谷くん……お願いだから私を助けてよ。
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