Keep a secret

□あともう少し
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 私がイクまで続けられる前戯の時間は地獄のように長く感じた。
 明るい室内で私はもう服を着ていない。時谷くんは私の服を脱がしながら露出していく肌にいちいち口付けていた。
 いつの間にか両手も自由になった。それでも抵抗する気力はもう残っていなくて、ラグの上に腕を垂らしている。

 刺激に耐えきれずに腕や脚をもぞもぞと動かすと、慌てたような時谷くんの手がすぐに私の体を抑え込みにかかる。私の様子を少し観察し、逃げる意思がないとわかったら手を離す。この繰り返しだ。
 私を組み敷いていてもなお、時谷くんには余裕がない。

「んっ……わっ、綾瀬さんの乳首尖ってる。ここも愛液が溢れて止まらないね。体の反応ってわかりやすいですね……こんな風に心の中も覗けたらよかったのにな……」
「ふぁ……はぁっ、はぁ……み、見ないでぇ」
「嫌です。見ます。心も……いつか見られるようになりますよね」

 もう頭が変になってしまったのか、体中をまじまじと観察されることも本当はそんなに気にならなくなっていた。

「あ、あっ……も、いいってばぁ」
「まだ二十分くらいしか触ってませんよ? さっきよりここが膨らんでいるからもう少しです」

 時谷くんの感覚では二十分は"まだ"なのか。
 ずっと刺激を加えられている場所がGスポットだと教えられた。あ、ここが噂の……と思ったけど、初めて知った振りをしておいた。
 膣内で一番イキやすいというそこを指の腹でグッグッと圧迫される。私を急かさない規則的なリズムの刺激。大きな波が来ることはなくとも、私の性感は高まっていて、イク瞬間の気持ち良さが継続しているみたいだ。

「んん……っ、あっ、あ……っ」

 トイレに行きたい……ムズムズする感覚がいよいよ強くなってきた。このまま擦られ続けたら我慢できなくなる。
 もう少しって何分後だろう。陰核ではイケても中イキはできない女性もいると聞いたことがある。私ももしもそうだったら……。

「白くて粘っこい愛液に変わってる……舐めたい……けど、あともう少しです」
「っ、ぅあっ、やっ、やあっ」
「はぁっ……本気で感じちゃってるんですね。可愛い、綾瀬さん」

 Gスポットをグッグッと押す指の力が強くなり、時谷くんので下から突き上げられているみたいに腰を浮かせてしまう。指の動きも早くなって、グチュグチュと卑猥な音がしている。掻き混ぜられているあそこは、ジーンと痺れるように熱い。
 ……もう、もう、本当に無理。時谷くんの前でお漏らしなんて失態は犯せない。
 私はファッション雑誌に載っていた同年代の女の子の体験談を真似することにした。

「あっ、あっ……もう、イク……ッ!」
「え?」

 ちょっとだけ大袈裟にのたうち回りながらのイッた振り。嬌声は演技ではなく口から漏れているし、強い刺激に顔を歪ませているからきっと自然に見える。
 指の動きを止めた時谷くんからの視線が何となく気まずくて、私は顔を反らす。

「へぇ? 綾瀬さん、演技が上手だね。まだまだ余裕がありそうで何よりです」
「え、演技って?」
「綾瀬さんの中、少しも痙攣してませんよ。いつもは膣の入口まで可愛らしくヒクつかせているのにね?」
「っ!」

 ゆるゆると中を擦りながら、時谷くんは私の嘘を暴いた。
 からかうような声に耳をくすぐられ、全身から汗がどっと吹き出してくる。恥ずかしすぎて消えてしまいたかった。

「あ……膨らんでコリコリしてたここ、萎えたみたいに元に戻っちゃった……」
「ん、はぁ……」

 膣内を責め続けていた指が引き抜かれる。すると、さっきまで感じていた尿意が嘘みたいに治まった。安心するのと、あそこに空洞ができたような違和感が生まれる。
 最初は確かに異物感でいっぱいだったのに、今はもう、そこにあるはずのものが急になくなってしまったような喪失感に奥の方が切なくきゅんと締まる。

「中はあまり良くなかったですか? おしっこが出そうな感じ、しませんでした?」

 時谷くんは少ししょんぼりしている。

「し、しっ、しませんよ! いい歳こいてお漏らししそうになるわけないですから!」
「はいはい。そういうことにしておきますね」

 ごまかしたい一心の私の返事は若干キレ気味だった。なんだか一瞬で元気を取り戻した時谷くんには、きっとバレてる。
 悔しくて睨みつける私を、時谷くんは意地悪な笑みで受け流す。

「従順な綾瀬さんの体がクリイキに慣れちゃったのは僕の責任ですね。綾瀬さんが感じてくれるのが嬉しいからって今までクリでイカせてばかりいましたもん。だから僕が責任を持って中の気持ち良さも教えてあげないと」
「ひぅっ」

 太ももを撫でながらゆっくりと這い上がってくる手が割れ目をそうっと撫でる。
 ビクリと素直に反応する私を見下ろす時谷くんの表情は、どこか誇らしげだった。

「でも、それはまた次の機会に。綾瀬さん、イッてください」
「ひゃっ! だっ、だめだめっ!」

 大きく割り開かれた脚の間、ぐっしょり濡れた秘所に、はぁはぁと荒い息が当たる。何をされるのか気付いて急いで体を起こすけれど、時谷くんはそこに顔を埋めた――

「あぁぁっ」

 時谷くんが陰核をチロチロと舐める。敏感な突起を赤い舌で上下左右に転がされ、唾液をまとってぬるぬるになっていく。

「綾瀬さ、ん……っ、綾瀬さん……」

 悩ましげに私の名前を呼び、私の秘所に顔を埋める時谷くんの表情は扇情的だった。

「はっ、んぅ……」
「ひぁっ! やっ、あ、あっ!」

 固く芯を持った陰核の包皮を剥かれ、そこを親指と人差し指でつままれた。
 剥き出しになった突起にザラザラした舌の表面が押し当てられる。乱暴にブラシで磨かれているかのような、激しい愛撫。でも、たっぷり唾液を乗せたぬるぬるの舌でこりゅこりゅと上下に擦られるの気持ち良い。

「はぁっ、綾瀬さん……イッて……」
「ふぁぁっ、あ、あっ!」

 荒い息が割れ目に直接吹きかかる。時谷くんは二本の指で陰核を擦り上げながら震えるそこにキスをし、柔らかな唇で吸い付いた。

「んん――っ」

 苦しくて切なくて気持ち良くて蕩けてしまいそうな感覚。無意識に逃げようともがく体を時谷くんの手に支えられる。ピリピリと激しい快感が私の全身を駆け巡った。

「ん……」
「あっ、あ、あ……あ……」

 陰核に触れていた指が、中に入ってくる。奥を探るように二本の指がバラバラに動く。

「上手にイケましたね。いいこ、いいこ」
「んあっ、あっ、とき、谷くん……」

 本当にイッたのか中を触って確認したらしい時谷くんが、満足そうに顔を上げた。イッたばかりでヒクヒクしている膣を撫でられれば、余韻で喘いでしまう。

「はっ、僕ももう限界です。綾瀬さんのナカに入らせて……っ」
「あっ!」

 時谷くんは性急にベルトを緩めると窮屈そうなボクサーパンツから性器を取り出し、膣口にあてがう。指よりずっと質量のある性器を押しつけられて恐怖心が戻ってきた。
 また痛かったらと思うと怖い。嫌だと泣きつきたかった……でも、荒い息を吐いて切なそうな時谷くんの表情を見ていたら、もう仕方ないや……なんて気持ちにもなる。

「い、痛くしないで……」
「はい……っ」
「ん……っ、あ、はぁっ」

 私の中に時谷くんの体の一部が入ってくる。体の内側を拡げられる感覚が不安で、性器の先っぽが埋まったところで体が強張る。

「綾瀬さん、力を抜いてください」

 時谷くんは安心させるように私の髪を撫でて、うっすら涙の滲んだ目元に唇を付ける。
 初めてした時と同じこと言ってる。あの時も乱暴にするかと思いきや私の願いを聞き入れて「好き」と言ってくれたり、優しくて、時谷くんは変だった。
 ……ううん、時谷くんはずっとずっと変だった。私を好きでいてくれたから、彼の行動はいつも変だったんだ。

「ん……綾瀬さん……好きです……」
「ひぁぁっ!」

 視線を交わして伝えられた言葉に心臓が大きく跳ねる。体の力が抜けた隙を見計らい、時谷くんは奥深くまで自身を挿入させた。
 私の中が時谷くんでギチギチに埋まる。痛くはないけど、お腹が苦しくて涙が出る。

「はぁっ、痛くないですか? 痛い、ですよね……?あ、あの……ごめ……なさい! 僕だけ気持ち良くて……ごめ、なさ……っ、でも綾瀬さんのなか……っ、すっごく気持ち良くて……動いていっ……ですか? ごめんなさ……!」

 なんて情けない顔で懇願しているんだろう。時々高い声を出しては歯を食いしばって耐えて、困ったように眉を下げながら途切れ途切れに訴えかけてくる。
 私が嫌がっても自分の快楽のために腰を振ろうとしないなんて、変態鬼畜ドSレイプ魔人の時谷くんはどこにいっちゃったの。
 内側で感じる時谷くんの熱も弱々しく震えているから、なんだかそれも含めて愛おしく思えてきて……私は完全に絆されてしまっているんだろう。小さく頷いた。

「はぁっ、はっ、綾瀬さん……綾瀬さん!」
「ん……っ、はぁ……」

 時谷くんがゆっくりと腰を振って私のお腹側に擦りつけるように抜き挿しする。徐々に馴染んできて苦しさはなくなった。
 小鳥がついばむようなキスを顔中に受けてくすぐったい。キスされる度に私の中は不思議と熱を持って敏感になっていく。

「ん……綾瀬さん、好き……っ」
「あっ、あっ、やぁっ、それやめてぇ……っ」

 腰の動きを早めて最奥を突き上げながら、同時に陰核を指でグリグリと刺激される。痛くてそれどころじゃなかった初めての時とは違い、奥を抉られながら敏感な突起を触られるのが気持ち良くてたまらない。

「好きですっ、好き……!」
「んああっ!」

 「好き」という言葉が私を更に追い詰める。胸がじわあと温かくなって、心臓から全身に「好き」が循環し、私の奥は時谷くんを歓迎するみたいに彼の性器をきゅうきゅう締め付ける。

「はっ……綾瀬さん、好きって言われると感じるの?」
「ひゃっ……あっ、ちが……っ」

 情欲に濡れた瞳で微笑む時谷くんから逃れたくて私は嫌々と首を振る。

「ん……っ! あはっ、綾瀬さんのおまんこが気持ち良いって言ってますよ。綾瀬さん、好きです。あ……っ、僕をまたぎゅってしてくれた……綾瀬さっ……ん、好き……好き……すき……ぃ」
「あっあっ、あ……っ!」

 時谷くんに「好き」って言われるとどうしようもなく嬉しい。私の体は素直に喜んで時谷くんをきつく締め上げ、中の性器もその刺激に悦んで質量を増していた。

「綾瀬さん……っ、俺っ、も、我慢出来な……っ、綾瀬さんも、んっ、一緒に……イッてください……!」

 時谷くんが髪を振り乱し、夢中で腰を振る。陰核をグリグリと刺激されながら膣は時谷くんの形に拡げられ、無茶苦茶に掻き回されていた。
 激しい快楽に目の前がチカチカしている。私ももう限界だった。

「はっ……綾瀬さ、好きだよ……っ」
「っ、あっ、あ――!」

 汗ばんだ額に時谷くんが口付けた瞬間に、電気が走ったように体をビクビク震わせ、私は達した。

「っ、んっ!……綾瀬さ、ん……」

 それとほぼ同時に時谷くんが自身を引き抜き、下腹部にドロリとした液体がかかる。

「はぁっ、はぁっ、はぁ……」

 体の震えがなかなか治まらない。何となく悲しげな表情で私の顔中にキスを落とす時谷くんをぼんやりとした意識の中で見ていた。
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