創作夢

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「姉ちゃんって今、生理?」
「そうだけど……お前モテないだろ」
「えー?姉ちゃんほどでもないよ」

 リビングでくつろいでいたら唐突に投げかけられた質問に呆れてしまう。家族といえどもあまり触れられたくない話題をどストレートに聞いてくる弟の瞬(しゅん)はモテないタイプだと確信している。とはいえ……同じトイレを共有しているからゴミ箱の中身とかで気付いてしまうこともあるんだろう。男はそういうのを目に入れたくないだろうから多少は申し訳なく思った。

「ゴミ箱のことなら私が片付けるから安心してね」
「んー…そうじゃなくて。生理中の姉ちゃんに頼みがあるんだよね」

おいおい生理中ってくっつけないでほしい。普通に姉ちゃんに頼みがある、でいいじゃないか。脳内でツッコミを入れながら私は短く何?と聞き返した。

「姉ちゃんの経血ちょーだい」
「は?」

返ってきたコトバに開いた口が塞がらない。こいつは何を言っているんだ。笑えない冗談を言いやがって。あまりに気色が悪いから全身に鳥肌が立ってしまったじゃないか……。

「お願い!舐めてみたかったんだよね」
「ふざけんな」

こいつ頭大丈夫か?病院に行った方がいいレベルじゃないだろうか。

「舐めさせてくれたらPS4買ってあげる」
「え!?」
「どうする?」
「欲しい!買って!」

PS4という単語に恥ずかしながら食いつかずにはいられない。反応の良さを受けてにやにや笑いながらしたり顔で聞いてきた弟につい即答してしまう。

「じゃあ……」

PS4と気持ち悪い弟。PS4と頭おかしい弟。PS4とただの変態……結論、変態は死ね。

「やっぱ嫌だ!変態は死んでくれー!!」

私はきちんと正しい解答を導きだせたと思う。じわりじわりと這い寄ってくる弟から逃げ出して家の中で唯一鍵のかけられる場所に立て篭もった。

「姉ちゃんトイレで何やってるの!いやらしいこと?」
「違うわーばか!」
「出て来てよ。ずっと前からの俺の切実な願いなのに」
「ずっと前っていつだよ!」
「初潮のときからだけど?」

な、なんてことだ……こんなに頭のおかしい奴と同じ屋根の下で暮らしてたなんて……今まで確かなものだと思っていた足元の床が実は薄い薄いガラスで出来ていて、細かなヒビが広がっていくような絶望感に襲われた。

「かわいい弟の頼みだろ」
「変態死ね!」

こいつのどこにかわいい要素があるっていうんだ。変態で変態で変態でしかない。ただでさえお腹が痛いのに変態の相手までさせられて頭まで痛くなってくる。
だから生理って嫌いなんだ。良いことが一つも起こらない。私はズキズキ痛みだしたこめかみを指で押さえながら、変態が諦めるまでしばらくトイレから離れられなかった。

END

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