創作夢

□06
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「入ったらすぐにドア閉めてね。"しろ"が外に出たら大変」
「……はい」

 仕事終わりにしろと合流し、ドアを慎重に開ける。そうしたらすぐに鈴の音が聞こえた。顔を見せた白猫のしろの尻尾は嬉しそうにピンと立っている。
 急に家を出ていったしろのことをしろもきっと心配していたんだろう。

「にゃー!」
「しろただいまー。後でおやつにちゅーるあげ……っ! んぐっ」

 二人とも玄関に入り、後ろ手で鍵を閉めた途端、唇を奪われた。強引にこじ開けられた唇の隙間から舌がねじ込まれる。

「ん……っ」
「んんっ、ふぁっ」

 私が背にしているドアに手をつき、逃げ道を塞ぎながら、しろはキスを深くする。喉の奥まで侵入してきた舌に口内を貪られ、閉じることを許されない唇から甘い声とともに唾液がこぼれてしまうのが恥ずかしい。
 私の知ってるしろは強引だが、経験からくる余裕のようなものを見せていた。でも、今のしろは何もかもが性急だ。

「はっ、お姉さ……っ、んん」
「ん、んっ」

 しろも息が続かないのか時折息継ぎのために離されては再び重なってくる唇。ブラウスの上から胸を揉みしだく手は荒々しいし、スカートの中に差し込まれた膝にぐりぐりとあそこを刺激されている。
 背にしたドアの向こう側でお隣さん家族の賑やかな話し声が聞こえる。永遠にも思えるような長いキスだった。

「はっ……俺、お姉さんの仕事を待ってる間ずっと我慢してたんだ。相手してよ」
「っ! やあっ、だめ!」
「ん……わ、すご。エッチな匂い」

 酸欠で思考が停止しそうな中、やっと唇を開放されたが、しろが足元にしゃがみこんだから悪い予感がする。そして、すぐに予感は的中してしまった。
 私のスカートに顔を埋めたしろが大きく息を吸い込む。一日ストッキングを履いていたからあそこは蒸れてしまっていた。汗とおしっこの匂いと、愛液の匂いが混ざり合ってきっとすごいことになっているはずだ。
 それなのにしろは更にあそこに鼻を押し付けてきた。

「一日お仕事頑張ったんだね。お疲れ様お姉さん……ん」
「ふぁっ、あっあっ」

 ストッキングと下着越しに、ベロベロと強めに舌が往復する。
 恥ずかしい、恥ずかしい……!
 やめてほしいのに私の口からは媚びるような高い声しか出てこない。

「んん……お姉さんの味濃い……お姉さんは頑張ってるよ……んっ」
「あ、あっ!」

 ストッキングに染みた蜜をちゅうちゅう吸い付かれ、まるで頭を撫でるみたいに恥ずかしい場所を舐め回されて、下着の奥であそこがうずいている。直接舐めてくれたらもっと、もっと気持ちよくなれるのに。
 私は抵抗することを忘れて一日の疲れをねぎらうようなクンニに夢中になっていた。ガクガク震える脚はすぐにでも座りたがっているが、私はしろの頭に縋りながら何とか体勢を保っている。

「お姉さん、もう挿れていい? すぐ挿れたい。ぶっちゃけ今日だけじゃなくて一週間ずっとしたいと思ってたんだ。このもやもやを晴らしてよ」
「ふぁ……挿れ、る……ここで?」
「うん。ヤらせて。お願い」

 足元のしろがジーパンのベルトを緩めながら真っ赤な顔で私を見上げている。その隣には良い姿勢で座っている愛猫のしろがいた。
 しろと私の様子を静かに観察していた黄色の瞳と目があうと、しろは「にゃあ」と可愛らしい声を上げる。

「――だ、だめーっ! ここ玄関だし! しろも見てるし!!」
「あー……ごめん……がっつきすぎた」
「わ、私お腹空いた。ご飯作るからしろも手伝って」

 子供に夜の営みを見られた母親のような気分だ。あそこはまだ熱を持っているけれど、とても続けていられない。
 ぐしゃぐしゃと髪を掻くしろの横を通り過ぎて、やっと靴を脱ぐことができた。

「……続きはシャワー浴びてからね。お姉さん明日も仕事だからそのまま寝れた方がいいだろうし」
「な、何ですること前提なのよ」

 言い返しながらも、愛液としろの唾液でべったりのあそこが甘くうずくのを感じた。





――俺がいない間、どうだった?
 どうと聞かれても特別な出来事などなかったから、自然と仕事の話題が中心になる。他にないのかとせがまれて、一週間で見たユーチューブの動画の話だの、朝昼晩の献立だの、何でもない話をした。
 しろは自分の話はろくにせずに私の近況ばかり根掘り葉掘り聞いてから、最後に少しつまらなさそうに呟いた。
 "お姉さん、俺がいなくても平気そう"

「はっ……お姉さんのここ綺麗だね。左右の形が均等で、ピンク色してる。奥は色が濃いかな。あー、やらしー。早く挿れたい。クリトリスはまっかっかだ」
「やっ、あっ! じっ、実況しないで!」
「散々待たされたんだよ。目に焼きつけたいじゃん。お姉さんもご飯作ってる最中ずっともじもじしてたし、俺にエッチなこといっぱいされるの待ってたでしょ」
「っ、し、ろっ……あっ」

 蛍光灯の下、私の濡れそぼったそこを左右に開き、まじまじと観察していたしろが再び顔を埋める。
 ……期待してないといったら嘘になる。また舐められても大丈夫なようにと念入りに洗っている。だからといって鼻筋の通った端正なしろの顔が私の股の間に……なんて、そんなことがあっていいんだろうか?
 葛藤している間にもしろは赤い舌でクリトリスをチロチロと舐めながら上目で私の反応を確認している。よく見たいからと言って眼鏡まで掛けているしろは普段より大人びて見えた。

「んぁあっ!」

 突然の強い刺激に腰が跳ねる。たっぷりと唾液を溜めた口内でクリトリスがじゅっじゅっと音を立てながら吸われている。そして吸い付く度にしろの頬がくぼむのがわかった。

「それだめ! あっあっ、んぁあっ!」

 何も身につけていない私の体も、私に欲情しているしろの表情も丸見えだ。私は嫌嫌と首を振りながらもそのいやらしい光景から目を離せないまま、絶頂を迎えた。

 それから指と舌でたっぷり愛撫された後。しろが唯一履いていたボクサーパンツに指をかけながら「あ」と短く呟く。

「リビングにリュック置いてきちゃった。持ってきます」
「……ゴムならベッド下の収納にあるよ」
「あ……使いかけ……」

 元彼とセックスする際に使っていたコンドームだ。彼氏と別れてから出番がないため久しぶりに取り出したが、箱は開いている。

「待ってて。ゴム取ってくる」
「え……しろ?」

 しろが静かにベッドから下りて私に背を向ける。続いてガンッと音がした。ベッドの横に置いている空のゴミ箱に、しろがコンドームの箱を投げ入れた音だった。
 使えるのがあるんだからわざわざ取りに行かなくても。しろだってもうボクサーパンツがはち切れそうになっているのにな。

 一人で置いていかれてしまい、何気なくゴミ箱を覗いてみたのは間違いだったのかもしれない。握り潰されて原型を留めていないコンドームの箱がゴミ箱の底に転がっていた。
 元彼とのセックスを想起させる物だ。しろが私に気があるとはまだ思えないが、嫉妬したんだろう。何となく嫌だなと思う気持ちも少しわかる。
 わかる、けど。捨てられたひしゃげた箱を見て、私の体はぶるぶる震えていた。

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