創作夢

□七夕ネタ
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「男の娘×女の子←男の子」世良視点



 七夕なんて雨が降ればいい。どうか、香坂さんと凛が会えませんように。


――明日の学校帰りに凛と七夕祭りに行くんだ。世良くん、羨ましいでしょー?
 何を勘違いしているのか、香坂さんは凛からのデートのお誘いを鼻高々に報告してくれていた。
 ところが七夕当日の放課後、バケツをひっくり返したような雨が降っている。今日は一日晴れの予報で、昼過ぎまで確かにカラッと晴れていたのが嘘みたいだ。
 どしゃ降りの雨を前にして、香坂さんがため息をついた。

「凛が今日は会うのやめとこうだって」
「この雨だもん。仕方ないよ」
「……世良くん、なんか嬉しそうじゃない?」
「そんなことないよ。あー、お気の毒に」

 香坂さんが不満そうに目を細めるが、「なんか嬉しそう」なんてもんじゃない。僕は踊り出したくなるほどの喜びを表情と声だけで目一杯表現している。鈍い香坂さんにも伝わって何よりだ。

「世良くんさ、いい加減凛のこと諦めてよね。私なんて、凛にチューしてもらったから!……まあ、ほっぺただけど……」
「……どこらへん?」
「え、ここだけど?」

 香坂さんは唇から指一本分くらい離れた頬をちょんちょんとつつきながら、首を傾げる。唇から近い位置。あの憎き男の葛藤が目に見えるようだな。
 考えるより先に僕の体は動いていた。香坂さんのふっくらした頬の感触が唇を通して伝わってくる。
 唇の隙間から少しだけ舌を出し、柔らかい頬を舐めると、汗の味がする。しょっぱい。マシュマロみたいなのに甘くないんだ。
 きっとあいつは知らないだろう。

「っ何すんの! 凛と間接キス狙いってこと!? こんなこと凛に絶対にしないでよ! 私が凛を守るんだから!!」

 だから何を勘違いしてるんだか。香坂さんは僕を振り払うと傘を開いて駆け出していった。


「あーあ。またやっちゃった……」

 後悔は雨音にかき消される。空を見上げれば僕の心模様みたいにどす黒い雲が広がっていた。織姫と彦星は会えたのかな。

 彼女のことはもう諦めた方がいいんだろう。僕が入り込める余地なんてないことはわかっているのに、それでも願ってしまう。
 雨よ、やまないで。どうか、夏中ずっと降り続けて、二人の距離をこれ以上近付けないでください。
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