創作夢

□04
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 姉ちゃんと、可愛い弟の俺。これまでは完全に俺優勢で姉ちゃんを追い詰めていたと思う。だけど今日は少し事情が違った。

「これはどういうこと!?説明してもらおうか。さあ!さあ!」
「そう言われても……」

 家に帰ると、姉ちゃんが仁王立ちして玄関で待ち構えていた。そのまま堅い床に正座させられて説明を求められている。答えないと解放してもらえなさそうだ。
 すごい剣幕でまくし立てる姉ちゃんの手には見覚えのあるアダルトビデオが。部屋の本棚の奥深くに隠しておいたはずの物だ。どうして姉ちゃんが持ってるんだろう……
 この状況になって初めて気付かされたが、アダルトビデオを持ってることがバレるのってすごく恥ずかしい気分なんだな。性的なことに比較的オープンな俺でもさすがに動揺せずにはいられなかった。

「どうしてあんたがこんなDVDを見てんの?おかしくない!?」
「えっ!?いや、むしろ持ってない方が……」

 バシバシとアダルトビデオで俺の頭を叩く姉ちゃんに言い返そうと思った。健全な男子がそういった物を持っているのは普通だし、むしろそうでない方がおかしいんだって。でも俺は続けようとした言葉を飲み込んだ。
 もしかして姉ちゃんはヤキモチを妬いているのだろうか?
 姉ちゃんに毎日好きだ好きだと伝えている俺が、アダルトビデオなんか持っていたことが悲しかったのかも。姉ちゃんからしたら浮気されているような気分になったのか。口では変態死ねとか散々なことを言っているくせに何だかんだで俺が可愛くて仕方ないんだな。

 安心してほしい。俺は物心ついた頃からずっと姉ちゃん一筋なんだ。アダルトビデオはあくまで妄想の参考にしてるだけであって、今まで一度だって姉ちゃん以外を思い浮かべて抜いたことはない。
 近親相姦を快く許してくれる神がどこかにいたらその神に誓ってもいい。

「姉ちゃん、俺はね」
「……おかしい」
「いや、だからさ……ぶっ!」
「ぜっったいおかしい!このDVDの内容を確認してみたらラブラブ密着エッチだって。はあ!?って感じ。しかもこれだけじゃない!あんたが部屋に隠し持ってたDVDはみーんな極々ふっつーの内容のエロだった!」

 若干浮かれながら誤解を解こうと口を開くと、姉ちゃんが捨てるように投げたDVDは見事俺の顔面に命中した。とにかく痛い。今日の姉ちゃんは攻め攻めだなと改めて思う。
 ていうか姉ちゃんもアレらを見たんだね。嫉妬に駆られて見てみたはいいけど、途中でドキドキしてきて自分でこっそり触ったりしたでしょ、絶対。だから怒ってるんじゃないの。「いやらしい気持ちにさせやがって!……責任……取ってくれるよね…?」みたいな。
 そんなスケベな姉ちゃんを想像してみたら俺の下半身もやばい。今晩はこのネタで三回抜こうっと。

「おかしいおかしい……私はお前が良からぬ思考に陥った原因は過激な創作物に悪影響を受けたからだと踏んで、原因究明のためにお前の部屋でエロビデオとエロ本捜索をしたわけだ。だがお前の部屋にあったブツは至ってノーマルだった。これはどういうことなのか説明してもらいたい!」
「ノーマルって……そんなの当たり前だろ!俺をどんな奴だと思ってたのさ?」
「経血マニアの異常性癖者」
「…………」

 姉ちゃんの言っていること全てが心外だった。更には俺の疑問に即答した「異常性癖者」という言葉で頭が痛くなってくる。
 俺は経血マニアなのかな?あくまで姉ちゃんの経血だから興味があるだけだ。生理ネタのアダルトビデオとか絶対に見たくない。想像するだけで気分が悪くなりそうだ。

「……別に俺は、異常性癖を持ってるとかじゃないよ。姉ちゃんのことなら何でも知りたいだけ」
「それで経血の味を知りたい、という思いに行き当たったのなら充分イカれてるだろ」

 どうして姉ちゃんはそうやってすぐに飛躍した考え方をしてしまうんだろうか。俺は異常なんかじゃない。ただ姉ちゃんが好きなだけ。経血に興味を持つのだって自然な流れなんだ。どうしたらこの思いが伝わるのか考えながら、俺は口を開いた。

「だって経血って子宮から流れてくるんだよ?セックスしたって姉ちゃんの子宮の内側には触れられないよ。舐めることも出来ないじゃん。それが経血を通してなら姉ちゃんの身体の奥の奥にある大切な部分を僅かでも感じることが出来る。俺は経血を通して姉ちゃんの子宮を愛でたいんだ。子宮を愛でるってことはつまり、姉ちゃんの何もかも全てを愛するってことに繋がるんだよ。
……それってとても素晴らしいことだと思わない?」

 喋り始めたら幸いにも永遠に続けられそうなくらい次から次へと言葉が浮かんだ。正直言って完璧に決まったと思った。
 さすがのツンデレ姉ちゃんもこの壮大な愛の告白には落ちるでしょ。

「まぁ、うん。いろいろ頑張って」
「え?……う、うん……」

 姉ちゃんはとても静かな声でそう言った。俺の言葉に同意してくれたんだろうか?
 何だろうこの変な感じは。心なしか姉ちゃんは道端に落ちているゴミ屑を見るかのような冷たい視線を俺に向けているような……。

「ね、姉ちゃんどうかしたの?」
「……何が?」
「何でもありません」

 今度は満面の笑みを浮かべている、けど。それはまるで、子供が無邪気に蟻を踏み潰しながら見せるような……なんだか俺を凍り付かせる笑顔で。あれあれあれ?なんか期待していた反応と違う。

 残念ながら今日もまた俺の思いは姉ちゃんの心に刺さらなかったようだ。だけどこの程度でめげるような俺じゃない。今日のところは最高にエロい冷ややかな姉ちゃんをオカズにして何回抜けるのか限界に挑戦しよう。
 くよくよしてたって仕方ないもんね。俺はいつか必ず、悲願を達成してみせるよ。

END
 

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