創作夢

□キスの奴隷
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※2023年3月追記※
・NTR要素が強い話のため、ご注意願います。
・夢主の彼氏視点です。(ヤンデレヒーローが夢主を寝取って見せつけセックスするところを絶望しながら見ている夢主の彼氏という流れ)
苦手な可能性が少しでもある方は進まないようにお願いします。




 ***

 ここは真っ暗だ。目の前には何もない。何も見えない。何も聞こえない。

「いつまで逃げてるつもり?」

 嫌だ、嫌だ。見たくない。聞きたくない。

「現実を見なよ」
「ひぃっ」

 暗闇から聞こえてくるよく知った声に、俺は情けなく小さな悲鳴を上げた。
 何も聞こえないんだと見えないんだとどれだけ自分に言い聞かせても無駄だった。瞼を強く閉じていたって瞼の裏に残酷な現実が浮かんで忘れられそうにない。

「ハァ……ねぇ、天音。天音からも千裕(ちひろ)に言ってあげて?可愛い彼女の話なら千裕も聞いてくれると思うから」
「んぁっ、は…い…っ」
「い、嫌だっ!お願いだから何も喋らないで天音!」

 頑なに瞼を閉じたまま目の前の光景を見ようとしない俺に痺れを切らしたのか、声の主の夏瑠(なつる)が天音の名前を呼んだ。聞こえてくる天音の声を掻き消すように俺は懇願した。

「あっ、ちひろ…っ、目を開けて?…私を見てぇっ」
「天音が今どうなってるのか千裕に教えあげようね」
「い、嫌だ…嫌だ……」

 何も聞きたくない。耳を塞ぎたい一心でがむしゃらに腕を動かすけれど、それは叶わない。後ろ手にきつく縛られたロープは必死でもがけばもがく程に手首に食い込んでいく。
 身体的にもジワジワと俺を苦しめる手首の痛みが今の状況をよりいっそう悲痛なものにさせていた。

「ち、ちひろぉ、わ…たしねっなつるのおちんちんでおまんこジュポジュポしてもらってますぅぅっ」

 その言葉が耳に届いた瞬間、頭を強く殴られたような感覚がした。反射的に開いた瞳には天音の姿がはっきりと映っている。
 見せ付けるように脚を大きく開いているせいでスカートの奥に下着を身に着けていないことがわかる。
 俺じゃない男の性器を受け入れ、後ろから突き上げられて悦んでいる天音の姿が嫌でも認識出来てしまう。

「……う、うぁぁあ!天音!天音!あ゙ぁぁぁあ…っ」

 俺の中の何かが壊れて髪を振り乱し、泣き叫んだ。ぐしゃぐしゃになった髪の隙間から見える悪夢のような光景から視線を逸らせない。本当は見たくない。だから瞼を閉じてこの現実から逃げていたのに再び絶望の底に突き落とされてしまった。
 どうしてこんなことになってしまったのか……俺はそんな思いでいっぱいだった。

 本来なら今日は天音の家でいわゆる家デートってやつをする予定だった。それなのに天音の家に着いたら夏瑠がいた。
 俺と夏瑠と天音は幼稚園の頃から仲が良い幼なじみだ。三人で遊ぶのも楽しいが、今日は恋人同士として天音と二人で過ごしたかったから少しがっかりした。
 それから何が起こったのかわからない。俺はいつの間にか眠っていた。目が覚めたら腕を縛られていて、目の前で天音と夏瑠が……。

 最初は天音を助けようとした。俺の彼女が、俺の親友に犯されていると思ったから。だけどそれは思い違いで、天音と夏瑠は合意の上で行為をしていた。
 それに気付いてからはこの地獄から逃げ出したいとだけ強く思った。でも足はその場に縛り付けられたようにピクリとも動かない。
 本能的に悟ってしまった。逃げられない。夏瑠は逃がしてくれない。
 天音が夏瑠のものになったと俺が認めるまでは、きっと。

 いっそのこと足まで縛ってくれた方が気が楽だったはずだ。そうすれば目を閉じて現実逃避することしか出来ない、こんなにも臆病な自分に気付かなくて済んだのに。


「あっあっ夏瑠!そこっそこぉっ気持ち良いよぉ!」

 壁にもたれて泣いている俺の一メートル程前で、天音は痴態を晒していた。
 四つん這いになった天音を夏瑠がバックから激しく突き上げる。夏瑠の動きに合わせて天音も腰を振りながら俺の声を掻き消すくらいに喘ぎ狂う。
 なんて異常な光景だ。何度でも絶望が襲ってくる。

「んっ……あぁ一番奥?天音はチンポで子宮口突かれるとすぐにイクもんね?」
「は、はいっ、わたしは子宮口でイッちゃう淫乱女です…っわたしの淫乱子宮いっぱい突いてくださぁい!」
「あははっ、素直で可愛い天音にはご褒美をあげないとね。赤ちゃん部屋いーっぱい突いてあげるよ。ほらっほらぁっ!」
「あっあっ、いいっ気持ち良いです!ふぁぁ…もっもう…イきそうですっ」

 こんな淫らな天音の姿は今まで見たことがなかった。普段は活発で何事にも積極的な性格だけどセックス中は恥ずかしがり屋で奥手。
 それが俺の知っている天音だったのに……腰をくねくねと揺らしながらAV女優のように媚びる今の姿には俺の知っている天音の面影は少しもない。

「あはっ、いいよ。何度でもイかせてあげる。だけどさぁ……天音のオマンコは誰が相手でもイキまくりの淫乱マンコになっちゃうの?」
「んぁあっ、ち、ちがっ違いますっ夏瑠だけ…っ、私のオマンコは夏瑠のおちんちんが好きなのっ千裕じゃダメ……物足りないのぉっ今までずっとイク演技してた……わ…たし……千裕とセックスしてイッたこと一度もありません…!」
「え……」

 天音の言葉が毒となって全身に広がり、心を蝕んでいく。ただただショックだった。天音が今までイク演技をしていたなんて知らない。気付かなかった。
 確かに俺はそういう行為が上手いとは言えない。初めてのときだってゴムを付けるのに失敗して何度もやり直した。天音には格好悪いところを見せてしまったと思う。

 だけど……好きだって、愛してるって……お互いの気持ちを確かめながら身体を重ねてきたはずだ。行為が終わると天音は照れ臭そうに笑いながら、幸せだねっていつも言ってくれた。
 俺だって幸せだった。何度もキスをした。体じゃなくて心を繋いでいるつもりだった。そう思っていたのは俺だけだったんだろうか。だから天音は夏瑠とこんなことをしてるのか?

「あははははっ。ねぇねぇ千裕、ちゃんと今の言葉聞いてたぁ?天音のオマンコはもう、僕専用なんだよ!」

 勝ち誇ったように笑う夏瑠は涙で滲んだ視界ではぐにゃりと歪んで見えた。夏瑠は……俺の親友はこんなことをする奴だったか…?
 幼い頃の夏瑠はいじめられることが多くて、泣きじゃくりながら俺に助けを求めに来た。でも俺だけが夏瑠を助けていたわけじゃない。悪ガキの俺が何か悪さをしたら頭の良い夏瑠は大人達をごまかすための作戦を考えてくれた。
 高校生になった今でも俺達は相変わらず正反対の性格で。だからこそお互いの足りない部分を補い合える良い親友同士だと思っていたんだ。

「さあ、天音。セックスが下手くそな千裕にとびっきりエッチな本当のイキ顔を見せてあげて?……ん……ほらっ」
「あっあっ子宮ゴリゴリって……きもちいっ!
なつるぅ……わたしもうっっ」

 俺に見せ付けるためなんだろう、四つん這いの天音が気付けばすぐ目の前にまで迫っていた。夏瑠の腰の動きに合わせて揺れる長い髪が俺の頬を撫でて、乱れた熱い息が鼻をくすぐる。
 顔と顔が接触しそうなくらい近い距離なのに、焦点の合わない天音の瞳に俺は少しも映っていなかった。俺は何もかも全てを諦めながら天音を静かに見つめた。

 幼い頃から大好きで、大切だった女の子。ただの幼なじみから抜け出したくて玉砕覚悟でした俺の告白に顔を真っ赤に染めてくれたっけ。まさにあの瞬間、惚れたんだって天音は言っていた。
 でも……今はもう違うんだ。天音は、夏瑠のものに……。


「天音は僕のものなんだよ!ねっ、そうだよね?僕のことが好きだって…っ、言って…!」
「なつる…っ!イっちゃ…っ、わ、わたしは……な…つ…が…………ち…ひろ……っ」

 一瞬、時が止まったんじゃないかと思った。どこか虚ろな天音と確かに目が合ったと思ったら、その大きな瞳が視界に収まらない程近くに迫って……俺を傷付け、夏瑠を歓喜させるはずの決定的な言葉が紡がれることはなかった。継続的に聞こえていた不快な水音もピタリと止んだ。

 カサカサに乾いている俺の唇に押し付けられた柔らかな感触。とても覚えのある感触だった。昨日は当たり前みたいに触れられたのに今日失ってしまったと思った温もり。
 俺は呼吸すら忘れて、止まってしまった思考を動かそうとしたけど、唇と唇が触れているのだと正確に把握するのには時間がかかった。多分夏瑠も混乱していたんだろう。だから夏瑠も動くのをやめて、時が止まったと錯覚するような無音の空間になった。

「……あ…はぁはぁ……ど…して…かな…?わ、私ね……千裕とのキ…スが一番……好きみたい……どうして…なの……そんな、おかしいよね……」

 沈黙を破ったのは天音だった。ゆっくりとした動作で俺から少し離れると途切れがちの言葉で話し始める。天音の表情はどうしようもなく苦悶に満ちていた。

「天音!!」
「っ!ちひ…ろ……もっとキス……そうしたらきっと……」

 俺は解放された唇で息を吸い、天音の名前を呼んだ。"俺の彼女"の名前を。グッタリしていた天音はその声に肩を震わせた。
 虚ろな表情……だけど俺を真っ直ぐに見て、再び唇を近付ける。まるで何かを確かめるように、何かを思いだそうとするように。

「な…んで…!」
「んん…っ!?」

 しかし、唇が重なる前に天音の口は夏瑠の手の平で塞がれた。そのまま強引に夏瑠のいる後方へ引っ張られていって、俺と天音の間にはまた埋められない距離が出来た。

「何で何で何で……何でなんだよ!僕以外とキスしたら駄目って言ったよね!?僕の方が気持ち良いキスとセックスをしてあげられる!それに……僕の方が天音のこと…っそれなのに!何で天音は…!」
「やっ!ち、ちひろぉ……」
「天音…!」

 完全に取り乱した様子の夏瑠が天音の肩を掴んで揺さぶった。怯えた天音は助けを求めて俺に手を伸ばす。その手を握ってあげたいのに縛り付けられた腕が言うことを聞かなかった。

「……やっぱりね……そうやって天音も千裕も……少しずつ離れていって……僕は一人ぼっちで…………クソッ!」

 夏瑠は少しだけ落ち着いてくれたのか天音の肩から手を離した。……と思った、次の瞬間には普段の姿からは想像も出来ない言葉を吐き捨てる。
 そのまま拒絶する天音の顎を持ち上げて強引に唇を重ねた。俺へと伸ばした手を絡め取り、逃げようともがく体を押さえ込み、噛み付くような荒々しいキスを繰り返す。それは天音の自由を、意志を、奪うためのキスだった。
 やがて天音はとろんとした瞳をして、激しさを増す口付けを従順に受け入れていく。

 俺の知らないうちに天音は夏瑠によって変えられてしまった。何をされてこんな状態になったのかはわからない。でもきっと夏瑠が何度唇を重ねても天音の心までは奪えない。
 夏瑠自身が一番わかっていたはずだ。だから天音とのセックスを見せ付けて、俺の方から天音への気持ちを失わせようとしてる。俺と天音を引き離すにはこの方法しかなかったんだ。

 今までの俺は天音と夏瑠のことを何でも知っているつもりでいた。でも本当は知らないことばかりだった。
 夏瑠も天音を好きでいたんだって、そんな簡単なことにも気付いてやれなかった。今更になって気付くなんて何もかも遅すぎる。俺はなんて大馬鹿なんだろう。

 俺達は幼い頃からいつも三人一緒だった。俺は天音が好きで、多分夏瑠も天音が好きで、天音はどっちのことも意識していなかった。
 今考えれば、変化がない幼なじみだからこそ俺達三人の関係は成り立っていたんだと思う。それを壊したのは、俺のした告白だ。

 本当は振られるはずだったんだ。俺の告白を聞いた天音の困ったような顔を見たら返事はすぐにわかった。
 だから俺は、遠慮がちに話し始めた天音の唇を塞いだ。唇を離した後に、何かが変わっていることを祈って。
 ずっと変わらないはずだった俺達の関係は、わずか一秒にも満たないキスで大きく変わった。あの瞬間、唇と一緒に奪った天音の心は今も変わらず俺だけのものなんだ。


 そう強く思うと、臆病で動かせなかった足に力が入るのを感じた。呆れる程遅いけれど、そこでまた一つ気付くことが出来た。
 夏瑠が俺の足の自由まで奪わなかった理由。こんなことになって苦しんでいるのは俺と天音だけじゃない。
 本当は夏瑠が一番辛くて苦しくて、でも自分ではどうしようもなくて、心のどこかで俺に止めてほしいと思っていたんだ。

 俺達三人がこれから新しい関係を築いていけるのかはわからない。それでも俺は自由な足でようやく一歩踏み出した。大切な彼女と親友を救うために。


End
 

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