普通の小説ワールド

□不幸な天使はお嫌いですか?5
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「バカバカバカバカっ…
もう知らないもんっ…」

ぶつくさ言いながら歩いているチャオ。

 

家を飛び出してから、かれこれ一時間くらい。

チャオは、あまり見慣れない道を歩いていた。

 

初めてである。

何が初めてかと言うと…
24時間、勇太について不幸を回避しなくてはならないチャオが、一時間も勇太と離れているのが…

である。

 

「何よ何よ何よぉっ!!
勇太さんがあたしのチーズを食べちゃったのがいけないんだもんっ!!」

ちなみに言っておくが、チャオの独り言は、もはや独り言の域を越えている。

はたから見れば「独り言」と言うよりも、まるで見えない何かと会話している感じである。

実際、すれ違うおばさんとかが…

 

かわいそうに…
親御さんも大変ね…

 

みたいな目で、チャオを見ている。

 

「勇太さんのバカぁ!!」

チャオの絶叫が、住宅街に響いた。

さっきのおばさんはダッシュで逃げた…

 

 

 

「あんたねえ…
もう二時間だよ?」

お母さんが、リビングでテレビを見ている俺の隣に座りながら言う。

「大泉首相も大変だね…」

さして政治に興味もないくせに俺は言う。

「お父さんに怒られるだろうねえ…」

俺はピクン、と震える。

「それで今度は、矛先があたしに向かって…
何で止めなかった!?
離婚だ!?
みたいになって…」

あ…

あのなあ…

『待ってお父さん!!
あたしと勇太はどうなってしまうの!?』

『ええいうるさい!!
勝手に路頭に迷え!!』

『ああっ!?
ごむたいなあっ!?』

一人芝居をはじめるお母さん…

おい…

38歳…

「それよりも…
最近物騒だし…
チャオちゃんが悪いヤツらにさらわれて…」



『あーれー!!
おやめになってー!!』

『へっへっへ…
よいではないか』

『ああっ!?
ごむたいなあっ!?』

またごむたいなんだ?

しかも何でさっきから時代劇風?

ひとしきり芝居を続けていたお母さんは、ひた…
っと、俺の目を見て…

「いってらっしゃい勇太」

…とだけ言った…
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